第7話 ワイルドハント

最初は信じられなかったが、地球外生命隊を退治する組織「ワイルドハンド」について考えると、白い巨大な手の存在からなんとなく納得できるような気がしてきた。しかし、自分が小銃で撃たれたにもかかわらず生きている理由は理解できなかった。勇気を振り絞って尋ねてみることにした。


「なぜ俺は生きているんだ?」


ドラゴンタトゥーの男は笑みを浮かべながら答えた。


「それはジェネシスによって生き返ったからさ。ジェネシスは地球外生命体が使用していた医療装置だ。ただし、その利点よりもデメリットの方がはるかに大きい。それは、頭がおかしくなること。自我を保てなくなり、最終的にはシリアルキラーになる」


彼は続けた。


「ジェネシスの機械を使ったのはわずか3人だけだ。イザベラ・バード、アーサー・ウィリアム、そしてニール・アームストロングという人たちだ。今後の目標は、組織の再興と怪物の根絶、そしてアーサー・ウィリアムに対する最後の幕引きさ。あいつがこの世界に多大なる影響を与えた。たかが報復のためにな」


黒崎はやはり信用することができなかった。母を殺した人物だからだ。彼は口を開いた。


「お前なんか信じるわけねぇよ。第一、そのSF的な信憑性なんて信じられるものじゃねぇ。今すぐにでもお前を殺してやる」


ドラゴンタトゥーの男は黒崎の言葉に対して固い表情で応えた。



「自分を殺すのは、後回しにしろ。まずは解決すべき問題が山積みだ。それを手伝ってから殺せ、いいな」


黒崎は唇を噛みながら考え込んだ。母を殺した人間の手助けをすることは適切なのだろうか。しかし、白い巨大な手による被害を目の当たりにしていたのだ。家族を失った子供たちもいるだろう。


この男を殺す機会はいくらでもある。 


躊躇しながらも、黒崎は彼の手助けをすることを決意した。

ドラゴンタトゥーの男は、腰から回転式拳銃を取り出して黒崎の顔の近くに置いた。 


「この拳銃を使い、怪物どもを殺せ。やる事が少々ある。だから一人で行動しろ」 


「何言ってんだよ。そんなん無理に決まってんだろ」


男は静かに足を振り上げ、一瞬の間を置いた後、黒崎の頭部に鋭い蹴りを放った。


視界は次第に闇に包まれ、気がつくと黒いセダンの運転席で深い眠りに落ちていた。

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