第2話崩れ落ちる日常

黒崎は地下道に辿り着くと、車椅子に乗った老人が現れた。老人は黒崎が通り過ぎようとした時に話しかけてきた。


「青年、ついに始まったのか?それなら、組織は潰れたってことだな」


黒崎は振り返って答えた。


「何を言ってるんだよ、じいさん。今逃げないと命が危ないんだ。外の状況は説明できないけど、かなりやばいんだ!だから早く逃げないと…」


老人は虚ろな目で黒崎を見つめたままだった。


「潰れたのか…終わりだ」と口を開くと、老人は震え始めた。


黒崎は老人の言葉に疑問を抱きつつも、その場を後にして逃げることを決意した。しかし、老人は車椅子を離れて黒崎に近づいてきた。老人の手が黒崎の足に触れると、骨が軋むような音が響いた。


老人は過労したような声で言った。


「組織が潰れたということは、世界が終わる。だから逃げろ。そして生き残りたいならば、アメリカのカリフォルニアに住むアーサーウィリアムに会いなさい」


黒崎は老人の言葉に深く考え込んだが、まずは生き延びることが最優先だと感じた。


最後の言葉を口にした老人は、息を引き取った。黒崎は逃げることを最優先し、老人を見捨てざるを得なかった。後悔もあったが、生きることが人生において最も重要なのだと自分に言い聞かせた。


地下道を駆け抜ける途中、黒崎は母親のことを思い浮かべた。彼は心配しながらも、もし逃げ続けたら…自分が死ぬ可能性もあるという思いが頭をよぎった。その瞬間、黒崎は方向を変えて地下道を戻り、母親のために行動することを決意した。


母親は黒崎を女手ひとつで育ててくれた存在だった。幼少期に父が亡くなり、辛い時期を経験しながらも、彼女は一度も涙を見せずに黒崎を育て上げた。彼女は黒崎にとって感謝の念を抱くべき恩人であり、かけがえのない存在だった。


戻っている途中で、黒崎は車椅子を見つけたが、老人の死体はそこにはなかった。


驚きながらも、黒崎は周囲を探索し、老人の姿を見つけることはできなかった。不思議な出来事に戸惑いながらも、彼は進むべき道を選び続けた。


心の中で疑問を抱えながらも、黒崎は母親の安否を気にかけ、彼女のもとに戻ることを心に決めた。老人との出会いや彼の言葉は謎めいていたが、今は大切な人を守ることが優先されると感じたのだ。


黒崎は再び地下道を進み、母親のもとへと急ぐために全力を尽くした。老人の存在とその言葉は、彼の中で謎のまま残ったが、今は生き延びるために行動する時だった。 


地下道から外に出ると、街は半壊状態に陥っており、人々の姿は想像を絶するほどの悲惨な光景だった。子供たちは目を損ねており、泣きながら母親を呼んでいる光景が目に飛び込んできた。


「助けて……おかぁさん……助けて」

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