第10話


「じゃ、僕は終わったから次どーぞ。」


そう言って部屋から出て行こうとする。


「おい、着替えはここに、」


「はい、はーい。」


そう言って着替えをとったがそれを持ったまま部屋に戻った。


「はぁ、何をやってるんだ…。」


我々を買った貴族の子どもは女だった。なら今頃どうなってるかは見当がつく。すぐ叫び声が……聞こえない。まさかもう殺ったのか?そんなはずはない。こんな早くに問題を起こせばすぐ元の場所に戻される。今後確実に逃げるチャンスをこんなところで捨てるはずない。だがもし殺っていたならここから離れないと。早く部屋に戻って確認をしなければ。


すぐに洗って着替え、部屋に戻る。


ガチャッ


そこには不貞腐れている顔をして服を着て椅子に座っているやつとベッドに座っている自分の主人がいた。

何事もなかったという様子だった。


「早かったね。あ、髪が濡れてるよ。」


急いだので濡れたままだということを忘れていた。

「は、はい。」と気の抜けた返事を返してしまった。


その時ふわっと温かい風が自分を包んだと思った瞬間には髪は乾いていた。

自分の主人を見ると人差し指を私の方に向けていたので魔法を使って乾かしてくれたのだと気づいた。


二人は汚れを洗うと見違えたくらい容姿は整っていた。

身の周りの世話をしてもらうために買った人は紺色のストレートの髪に黄色い瞳。

用心棒の方の人は少しくすんだ金髪に水色の瞳。

綺麗に身なりを整えれば二人とも貴族だと嘘をついてもバレないだろう。



「ねえ、早く屋敷に帰らないの?それにお付きの人はどこ?」


不貞腐れている奴が言った。


「付き人はいないし、屋敷はないよ。だから二人を買ったの。」



「「…え。」」

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