第9話


この宿屋は奴隷を連れた人でも問題なく利用できると教えてもらったところだ。


二人はまだ枷が付いている状態で、身なりも汚く匂いも酷い。


シャワー付きの部屋をとることができてよかった。


部屋に入ると簡素な机一つと椅子一つ。そしてベッド一つ。


部屋に入ってすぐにセイは二人の枷を外した。



「ご主人様、買っていただきありがとうございます。」


すぐそう言って膝をついたのは初めに選んだ男だった。


もう一人はギロっとこちらを睨み、すぐに笑みを作って同じく膝をついて頭を下げていた。



「二人とも先にシャワー浴びてきて。それから話をしよう。」



「「かしこまりました。」」

二人はシャワーへ向かった。



ガチャっと扉を開けると狭くはあったが、しっかりとした作りになっていて着替えるスペースもきちんと用意されていた。

そのスペースの棚にセイから渡された着替えを置く。

これはさっきの奴隷商がサービスと言って渡してきたものだ。



「僕が最初にシャワー使うねー。」


そう言ったのは二番目に選ばれた用心棒になるやつだ。


「どうぞ。」


体はだいぶ汚れて気になるが、シャワーの順番なんてどうでもよかった。

用心棒として選ばれた目の前のシャワーを浴びている奴は見た目はかなり若い。


こんなやつが人を殺しまくったのかと思うと。人は見かけによらないな。


自分は身の回りの世話用に選ばれたみたいだが、今度はどんな頭の悪い貴族の家で仕えることになるのか。

そしてそれがどれぐらい続くのか。彼は期待していなかった。

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