第3話


数年前に聖女が再び現れたという話を聞いた。


「でも、それが自分の名前だから。」


セイは兵士を見る。


セイの顔はハッキリと見えていないはずなのに、見られた兵士はビクッと反応する。


俺の部下が気圧されている。それに対してこんなに多くの兵に囲まれているのにこの少女は何も思っていないようだ。…ただ強がっているだけか…?


カシャッ


と音がした方をセイは見た。

ルシウスが剣を抜いていた。

それをセイの首元近くによせる。


「その名は隣国の聖女様の名前だ。簡単に語っていいものではない。本当の事を言わねば…」


そう言いかけた時セイが剣先を指先で掴んだ。


「こら、何をす…。」


!?。剣が…動かない。


「当たったら危ないよ。」


この状況に他の兵士達はどうすればいいのかと顔を見合わせていた。


只者ではないな。


「ふ、ふははは!よし、この少女の話を聞こう。剣を向けてすまなかったな。駐屯所に連れていくぞ。それでも構わないかな?お前達は引き続き警備を。」



「「はい!」」


急に笑った隊長に驚いていた兵士だったが、言われた通りすぐ警備に戻っていた。

セイはうん。と頷いた。



ルシウスが乗っていた馬に抱え上げて乗せてもらう。


「よっ」


そう言って後ろにルシウスが飛び乗った。


「じゃあ進むぞ。」


パカパカと馬は歩みを進める。気を遣ってくれているのかゆっくりとしたペースだ。


少し行くと建物が見えてきた。そこはかつて村があった場所だとセイは思った。


勘違いだったかな。


「ここが駐屯所だ。」


しっかりとした石で作った壁はルシウスより少し高い壁で、門の左右には警備兵が立っている。


「「お疲れ様です!」」



「異常はないか?」



「は!ありません!」


そんな言葉を交わし、ルシウスは中に入っていく。

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