第2話 ソフィー嬢とのお茶会 ランハート視点

 ソフィー嬢から返事を貰い、その後は学園で何度か挨拶をしたが、周りの目もあり、細かい話は俺の手紙に入った義姉様とソフィー嬢のやり取りで行われた。


 お茶会当日は、両親も領地に帰っており、兄も仕事で一日家にはいない日が選ばれた。



 ソフィー嬢が我が家に来る、と思うと、前日からそわそわして眠れず明け方にようやく眠りにつけたと思ったら、義姉様から、「いつまで寝てるの!」と、叩き起こされた。



 時計を見ると昼前で、俺は慌てて身支度を整えていると、メイドから「馬車の準備が出来ました」と言われた。



「ほら、迎えに行ってきなさい。しっかり挨拶もしてくるのよ。最初が肝心よ。頑張ってね。これ、うちの領地の特産品ですって渡しなさい」



 義姉様からジャムの瓶を沢山持たされ俺は馬車に乗り、クレメント家へとむかった。



 クレメント家に着くと、我が家の三倍はあるんじゃないかと言う大きさで、馬車道も綺麗に整備されていた。改めて見ると本当に凄いな、としみじみ見上げた。



「本当に、我が家と家格も財力も違うな・・・」



 俺は独り呟き、馬車を降りた。



「ソフィー嬢のお迎えに上がりました」と挨拶をすると、執事がニコリと礼をされ、「こちらでお待ち下さい、すぐにお嬢様が来られます」と言われ、待合室にしては立派な部屋に通された。


 そのまま、「わが領地の特産品です。どうかお受け取り下さい」と言って執事に渡すと、「これはこれは、ご丁寧に有難うございます。お嬢様もお喜びになるでしょう」と言って貰えた。


 メイドがお茶を入れてくれようとしているとドアがノックされ、ソフィー嬢が来られ、美しい挨拶をされた。



「御機嫌ようランハート様、お待たせして申し訳ありません。本日のお茶会、楽しみにしておりましたわ。ジャムも有難うございました」



 私も礼を返し、「ソフィー嬢、本日も大変お美しいです。ジャムはチェリット家の特産品の物です、お口に合うと宜しいのですが。皆様でお召し上がりください。では、参りましょうか?」



 と、腕を差し出すとソフィー嬢は顔を赤らめ、「はい、宜しくお願いします」と言われた。




 我が家に着くと、義姉様が出迎えをされ、お互い挨拶をしていた。


 そしてサロンに移動し、早速お茶会が始まった。


 始まってすぐに義姉様から、我が家の現状等の説明もされ、ソフィー嬢との話し合いが行われた。


 俺は話し合いには相槌を打つ事が多かった。


 義姉様、ソフィー嬢の二人でどんどん話は進んでいく。


 ご婦人方の話し合いって凄いのだな、と感心していた。


 騎士の剣乱舞の様に言葉が飛び交う。


 まるで違う話をしてるかと思うと、不思議と話しが進んでいる。


 二人を見ていると騎士団長と、副団長の剣の打ち合いを見ているようだった。



「では、それで宜しいかしら?」



 話し合いは終わった様だった。



「はい。金銭に関しましては私の私財がありますので、そちらを出します」


「そうね、先立つものはしょうがないわ。申し訳ないけれどソフィー様にお願いするわ。上手くいけば、何倍にもなる事よ。そしてソフィー様の実家を頼らない所が肝心だと思うの。しっかり成功させましょう。主人には今夜にでも私から話をしておくわ。あと、ソフィー様はジャムはお好き?」


「ええ。甘い物は好きですわ」


「良かったわ。では、ソフィー様もバンバン働いて貰うわよ」


「はい、頑張りますわ。義姉様。どうか私の事はソフィーとお呼び下さい」



 二人は握手をしていた。

 契約が成立したようだ。



「では、ソフィーさん、ランハートの事を宜しくね。あなたはとにかく美しく。今まで通りよ。いいわね?」


「かしこまりました。何があってもランハート様を御守りしますわ。私の命に懸けて」



 ソフィー嬢が騎士の様な事を言っている。



「あの、お二人とも、私は自分の事は自分で。そしてソフィー嬢の事も私が御守りしたいのですが」



 俺がそう言うと、ソフィー嬢は顔を赤らめ、義姉様は首を振った。



「ランハート、女には女の戦いがあるの。あなたはしっかりしておきなさい。ふらふらしてはダメよ。いいわね」


「はい。解りました。義姉様、宜しくお願いします」



 俺はそういって礼をした。





 それからしばらくして、俺は正式に叔父の養子になり、ランハート・クランとなった。


 ソフィー嬢と義姉様は兄様、叔父上と話合い、クラン家で会社を設立した。


 会社名はS・クランと名付けられ、王都に小さな店を出した。


 俺は叔父を後見人にして学生でありながら、社長となった。




 S・クランの商品は主にチェリット家のジャムとなった。



 そこで、店で売り出すにあたって、ソフィー嬢をうちの専属モデルとし特産品のジャムのポスターを作製した。


 ポスターはジャムの種類によってドレスを変え、ポーズを変えた物が作られた。


 上品で、優雅に、時には後ろ姿や、シルエットのみで。


 ジャムを食べているシーン等は無い。ただ、ソフィー嬢の横にあるだけ、時にはソフィー嬢が持っているバスケットにそっと入ってるだけ。


 それなのに、ポスターが張られると飛ぶようにジャムは売れた。



 ジャムは添え物。

 あなたを引き立たせる物。

 人生に甘い一匙を。


 そう売り出した。


 そしてジャムは季節限定、個数限定、贈答用の特別の瓶に入った物等色々作られた。



 ことごとく売れていった。



 次にソフィー嬢は栞のデザインをされた。


 友人の令嬢にデザインのアドバイスを受け、季節の葉のデザインや恋人たちのシルエットのデザイン、幼い子供、猫を撫でている貴婦人等で、古典文学の詩が書かれた物を作られ販売された。



 心に貴方の言葉を。

 思い出に貴方の詩を。

 貴方の心の片隅に私の詩はいかがですか?



 そう打ち出して店に置いた。


 ソフィー嬢が本を読んでいるシルエットのポスター、それと同時に販売をするとこちらも売れた。




 そして義姉様は「さあ、一族会議よ、皆を呼ぶわ」と、言われ、第二回一族会議を開いた。




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