第22話 アリスからシンデレラへ

貴志に手を引かれ、校内を歩く。

時折、出店で食べ物を買い、腰を下ろして食べる。

それから貴志が入った事がないというお化け屋敷に入り、俺が必要以上に怖がった為、貴志がお化け役に説教をするというハプニングもありながら、最終的に俺の教室でコーヒーを嗜む。

俺は休憩が終わったので受付へと戻り、入れ替わりで秀が貴志の案内役を買ってでる。終始ベッタリしていた女装姿の秀に、何度も離れてくれと頼む貴志。

それでも、ずっと俺達は笑顔が絶えなかった。

時間が経ち、学園祭も無事に終わりそれぞれが片付けもそこそこに帰宅していく。

俺のクラスでも打ち上げしようなどと盛り上がっていたが、俺は待っている貴志の元へと急ぐ。

校門を出てから辺りをキョロキョロして、いつもの車を見つけ駆け寄る。

ドアが開かれた瞬間、後ろで小さくカシャリと音がして振り返るが、続々と出てくる生徒達の姿で、その音の元がわからず気のせいだと車に乗り込んだ。

そして一時間後、事件は起きた。


貴志に誘われ食事に来ていた個室があるレストランに、岬さんが慌てた様子で入って来る。

貴志の耳元で何かを話すと、見る見る貴志の表情が変わっていく。

どうしたのかと不安になっていると、携帯に秀からの電話がなる。

その音と貴志の表情から「何かが起こった」事は容易にわかり、胸の鼓動が激しく打ち鳴らす。震える手で携帯を取ると耳に充てた。

「天音、今、どこにいる?貴志と一緒か?」

「う、うん。どうしたの?何があったの?」

「お前が貴志の婚約者だとバレた!今、ネットニュースで大騒ぎだ。いいか、貴志の側を離れるな。俺はお前の家に行って、おばさん達の様子を見てくる」

そう言って秀は電話を切る。

バレた・・・?どういう事・・・?ネットニュースって・・・

俺は頭が追いつかず、握りしめていた携帯のネットを開く。

そこには、トップニュースに貴志と天音の名前がいくつも連ねていた。

“南條カンパニーの次期跡取り、婚約者の正体は?“

“底辺オメガのシンデレラストーリー“

“婚約者ではなく愛人では?“

そんな憶測と、俺を、オメガを差別する言葉がいくつもいくつも連なっていく。

そしてある文字が目に止まる。

“未成年と要擁護年齢の禁断の恋“

その言葉が俺の胸を強く締め付けた。ただの恋人同士でも擁護年齢と歳の差がある者の付き合いは認めれていない。

そこに性犯罪の可能性があるからだ。本来ならオメガの為の政策だが、アルファにも当てはめられる。

その地位が高いアルファほど、その対象になる。

オメガが逆にフェルモンを使って、幼い子供に性犯罪紛いなことや、恩恵を狙うのを防ぐためだ。

「天音、大丈夫か?」

いつの間にか側にいた貴志に俺はしがみつく。

「貴志くん、俺達どうなっちゃうの?」

「大丈夫だ。記事は今、回収に向かわせている」

「お、お父さん達は?」

「今、うちの者を向かわせている。幸い秀から連絡が来て、無事なのは確認できている」

貴志の言葉に安堵するも震えが止まらず、涙が溢れる。

「お、俺達、もう一緒にいれないの?俺、いやだよ・・・もうすぐ離れちゃうのに、もう会えないなんて嫌だ・・・貴志くんともっと一緒にいたい・・・」

言葉を捻り出すように貴志へと放つ。

貴志は何度も大丈夫だと繰り返しながら、俺を抱きしめる。

俺の胸元にある貴志の体を強く抱きしめ返す。

涙は止まらず、貴志の声はちゃんと届くのに、不安が拭いきれなくて俺はそのまま意識を手放した。

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