丁寧になんて言葉は放り投げることにいたします


 ごきげんよう。皆様。

 あれから一日経ちましたわ。王子をやってしまったのは少しはやまったかもしれませんが、清々しさを考えれば十になりますわ。

 ゴリラとして鍛えてきたのは全てこのためだと思えるぐらいの爽やかさでしたの。

 こんなにすっきりしてますとトレーニングもはかどると言うもの。今朝もトレーニングのフルコースを楽しんできましたわ。そのお陰かお肌もつやつや元気もりもりですことよ。

 昨日やったお陰で今日、王子は学園にこれないはずですし、とてもにこやかな気分で望めるのもいいことですわ。授業に集中できると言うものですね〜〜

(お前授業に集中していたことなんで一度もないだろうか。

 ずっと空気イスしてるんだから)

 そんな細かいことはいいのですよ。

 ふんふんふ〜〜ん。…………ってあら。

 どうしましょう。貴方、私どうやら幼覚が見えますわ。

(俺にも見えているのだが……。まあ俺達二人同じ体だしな。幼覚も同じものだろう)

 何故かヒロインもいてやたらとイチャイチャベタベタしてるように見えるのも気のせいかしら。頭常春同士お互いを見ておけばいいのに、私のことを見てきてるよ

うな気もするのも気のせいかしら?

 王子は変態くさい目で、ヒロインは殺意の入った目で見てきますわよね。あ、見てください。奥の席で魔法使いが歯噛みでもしそうな勢いで王子を睨んでおりますわ。

 もしかしていつのまにかヒロイン取り合いでも始まり終わってました?

 だとしたら恐ろしい早さなのですか……。

 まあ、幼覚ですものね。

(そうだな、幼覚だからな)

 お願いですから現実見ろ!! っていつものように言ってくださいまし! あなたが言ってくれませんと話が進まないのでしてよ!!

(俺にだって現実を見たくない時はあるんだ!!)

 何であのバカ王子生きてますの。昨日死んだのではないのですの、一ヶ月はまともに動けないぐらいあれしてやりましたつもりでしたのに。王子の頑丈さはどうなってますの。

 そして何でこりもせずに変態の目を私に向けてきますの!

 一度殴られたらそれでこりませんこと!! あ〜〜もう! ふざけんじゃないですわ!  私が嫌いなことぐらい分かっているでしょうに!

 それとも気付いてないとでも言うのですか。そんなにもおバカだとでもいいますの!! おバカバカバカバカだとでも

(言うんじゃないのか)

 言いますわね。普通にバカでしたわ

 はぁ、頭がいたいですこと。常春イチャイチャ発情バカはもうスルーしますわ。空気イスで今日も体を鍛えるのですわよ。

 視線がうるさいですけど。

 王子の奴、何でなにかを期待するように見てきますの。

(無視しろ、無視、奴らは空気だ)

 そうですわ、やつらはエアですわエア。どこにもいないのです。見えませんとも、映りませんとも、何せもう初夏ですから。

 春は消えてなくなったのですわ

「クイーンリゼット」

 あ……

(俺は何も聞こえてないぞ)

……今は夏、今は夏

ああ、五月だが夏でいい。

「クイーンリゼット、こちらを見ろ」

「王子様、何故彼女のことを呼ぶんのです。私を見てくださいな」

「ふふ、そう言うな俺はどっちも等しく愛しいんだ、二人共愛しているのだよ」

(おちつけ、このまま行動したらまず間違いなくゴリラだ)

これが落ち着いてなんていられますか。何をあのバカは言い出しておらますの。あいつの頭はついにいかれてしまいましたの。

(ついにも何をもとからいかれてる)

 それはそうですけど!!

(みるなよ。みるな。みたら最後、こういう奴らはうざ絡みしてくるんだ。いじめっ子と同じだ。かかわりたくなければ透明人間として扱うんだ)

 さずか元いじめられっ子ですわ。対処の仕方をこころえてますこと。

(まぁ、見なくてもからんでくる奴らだからあんまり意味はないんだけどな。運が良ければスルーしてくれるだけで)

「クイーンリゼット。そうへそを曲げるな。お前のことも好きだ」

 意味ないじゃないですか。何一つ意味がないじゃないてすか

(ある。一つだけある)

 何ですか。

(お前がゴリラにならない)

 それは重要ですけど、とてもとても重要ですけど?!

「なあ、こっちを見てくれないか。お前のあつい思い知っているから」

「殿下。私のことも見てください」

「もちろんだ」

 でもでもこの馬鹿げた会話を無視するのは難しくてよ。すでに頭が沸騰しそうなんですの。怒りにふるえて空気イスさえしていられません。ええ、どうなっているんですの。

 バカの頭の中には花しか入ってませんの!?

 どうすれは私が王子を好きだなんて考え方になりますの。いつ私が王子にあつい思いなんてむけました。

 ヒロインもヒロインですわ

 せっかく顔はかわいいのですから、あんな二股をどうどうと掛けようとしている男なんて捨ててしまえば良いのです。他にも先生や魔法使いが貴方の周りにいるでしょうか!?

 何を考えているのですか? 頭パッパラーですの!

(そこは知らない。どうでもいい)

「なぁ、お前の可愛い顔がみたい」

「私えるの美しい顔がみたいですわ」

「こっちを向いてくれ、二人は俺にとって大切な花なんだ」

「もう……だめですわ!」

 バン! バキン!

(おい、お前)

 机が壊れてしまいましたが、そんなこときにしていることもできませんわ。私もうこの環境にも耐えられませんわ。

 私、気が長い方ではございませんの。

 ただでさえゲボでも吐きそうなほど、恥も外聞もなく股を開いているようなこの状況が気持ち悪いといいますのによりによって花? あの男この私を花といいましたか?!

(そこ! 怒るとこそこ!? もっとあるだろう」

 この私はクイーンウホット・ゴリラッシュ。学名 ゴリラ・ゴリラ·ゴリラのゴリラでしてよ。どんな森の中だろうと生きていけるような生命力の強さが誇りのこの私をあんな小さく繊細なものと一緒にするなんて!!

 そりゃ強いものもありますけれど、それでもゴリラの方が倍強いし、見た目だっていかついのですよ!

(そんなこといわれてもそこで怒られてもわからん)

 見てなさい。もう許しません。

「エン・フタワール様。少しついてきてください」

(おい。何を……)

「待て、何故俺じゃなくフタワールを」

「わかった」

(いや、お前はあっさり頷くな。何をするつもりなんだ)

 ですからもう終わらせるのですよ、

「おい何処に行くんだ」

「用事を思いだしたのでお暇いたしますわ。どうぞ殿下は イチャイチャしておりましたらいいのですよ、それでは」

「待て」

 王子の言葉なんて待たずに教室を出ますわ。周りの目を見てと何も気にしませんの。

「大丈夫か」

「大丈夫ではありませんわ、でももうよいのですわよ」

 上機嫌になって笑ってやりますわ。だって全部もう終わらせてやるのですから。  

 いいですか。私が今までお嬢様のふりをして暮らしていたのは一年後、彼らが私を断罪しようとするその場で逆に彼らをを断罪するのだと決めてその日を楽しみにしていたからですわ。

 でも王子が想像以上のバカになりはててしまった今、そんな日を待ってられません。私はもう今ここで王子をぶっ飛ばすのを決めたのです。

 その他がどうなろうともう知らないのです

 どうやらヒロインにも捨てられたようですし、お好きにしなさいって感じ。何かバカを起こすようならその都度殴ります。

 ですから全てを終わりにするために

「城に殴り込みに行きますわよ」


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