付き合いきれないこのクソ野郎! って、あら、どういたしましょう?


 あら? 今日の授業は王子もいるのですね。

 昼食が終わって午後の授業ですが、それまでいなかった王子の姿があって驚いてしまいました。まあそんなことはおくびにもだしはしないのですが……。

 ねえ、貴方。

(何だ)

 気のせいかしら王子がこちらを見てきておりませんこと。 

(……気のせいた)

 ならいいのですけど。

 いえ、やはり気の所為ではないのではなくて。じろじろじろじろそれはもうなめるように見てきていなくて。席は二つ隣のままですし。王子用の豪華な席に座らされた者が可哀想でしてよ。

 元の席に戻りなさいな。

(大丈夫、いつもとかわらない視線だ)

 大丈夫でなくてよ!! あの男、ヒロインを好きになったくせしてどういうことですの。ヒロインを好きというのもしかして嘘ですの。ゴリ友が私に嘘をついたので……そういうわけではなさそうですわ。

 彼も彼で困惑しています。

 正直いつもと表情はかわりませんが、むだにダンベルでトレーニングしていますのでわかりますわ。

 いいですわね。私守ダンベルを持ちたいですわよ。

(いや、さっぱりわからん! あれは困惑していることになるのか!?)

 理解できないことが起こると身体を兎に角動かしたくなるものですわ。

 あ〜〜、もう! なんなのですか。王子は! 何であんな目で見るのですか。授業が頭に入りませんわ!?

 まぁ、私、授業なんて聞かなくても大抵のことは既に覚えているのですが。

 にしてもにやにやする王子が気持ち悪いですわよ。



 キーンコーンカーンコーンとチャイムがなります。やっと地獄の時間が終わったのです。色々めんどうなので今日はもう帰ろうと想います。

 次の授業なんて知ったことでなくてよ。

 家に帰ってトレーニングするのです。

「クイーンリゼット」

 ねえ、貴方。何で王子は私を読んだのだと思いますか?無視をして帰っていいですか。

(知らねえよ。王子を無視したって騒がれても良いのなら、良いと思うが)

 ぐ。それは後々困りますわね……。仕方ありませんわ

「何ですの。王子」

「少し時間はあるだろうか。二人で話したい」

 あるわけないでしょう。ボケが。

「ええ、もちろんかまいませんわ、ですが二人でというのは少々。いくら学園と言えども何かがあっては困るのでエン・フタワール様は共でないと」

「護衛など別にいらん」

「良くありませんわ」

 いざという時は殴ってすませるのですから持ち帰ってもらうためにもいてもらわなければなりません。

 ゴリ友はもうスタンバイしてますわ。さすが。王子は滅茶苦茶嫌そうですけどね。ヒロインに何を吹き込まれたのやら。

 ……いえ、元から護衛は嫌いでしたわね。

 それをゴリ友が無理矢理くっついていたのですわ。良く考えたらやりますわね。

(昔から頑固だったからな)

 本当に見た目が爽やか貴族なのが、びっくりする内面ですわね。

「エン・フタワール様も一緒でよろしいですわよね」

「はぁ、仕方あるまい。

 言っておくが邪魔はするなよ」

 ぎろりと王子がゴリ友をにらんでいます。あれが護衛に対する態度でしょうか。裏切られて後ろから刺されても文句は言えませんわね、この世のすべてが自分に跪いているなんてどうして思えるのか。

 下剋上なんて言葉がこの世にはありますのにね。

 まあ、ゴリ友がやるとしたら正々堂々宣言するとは思いますけど。

 やれやれですや

 王子が歩いていくのでついていきます。この人は本当に何をしたいのでしょうか。さっさとヒロインにでも会いに行けばいいのに。それを私と休み時間まで過ごそうだなんて仲のいい婚約者だと思われてしまいますわよ。

(それなんだが)

 あら? どうかしましたか?

(……少し考えていたんだが)

 何です。言い辛そうですね。

 あ、王子が教室に入りましたわ。どうやらこの教室でお話するようです。お話するだけなら一々場所を変えなくてもいいのに

(あのヒロインが使っているアイテムって好感度を上げるものなんだよな。それ以外の効果とかあるのか?)

 はい? さあ、使ったこともないから知りませんが、恐らくないのではないですか。ゲームではそれだけでした。

(だとしたら……)

「クイーンリゼット、お前に今までのことあやまらせてくれ。

 確かに俺はお前に酷いことをしてきた」

 え、何ですの。こいつ。

 急に謝られてもこっちは吐きそうになるだけですのに。

 どう言うことです。

(あ~、やはりその〜〜)

 何です。この気持ち悪い状況が何かわかるのですか。

(そのな〜〜)

「反省した。そして新たな俺の気持ちを聞いてほしいんだ」

(あ〜〜、もしかしてなんだがな、)

 何ですか。というかゴリ友は見ていないで助けなさいよ。無理だみたいに首を振っているんじゃないですわよ。

 王子がこちらを見てくるのが兎に角気持ち悪いのですってば。

(ヒロインへの好感度はあがってもお前への好感度が下がるわけじゃないなら、……もしかしてそいつまだお前のことを好きなんじゃないだろうか)

 は?

「俺はお前を好きなんだ」

 はぁああああああ

「え、いや……。え。だって は」

「何でお前が、 のことを」

 は、しまった。まだ思いあったばかり。私が知っているはずないのに。って、何でこいつ、そうか。みたいな顔をして見てくるのですか。うん。うんって何を頷いておりますの。

 絶対、何かとんでもないことを思ってますわよ。

「そうか。 のことに嫉妬をしていたんだな。 

 大丈夫だぞ。俺はどっちも大好きだからな。クイーンリゼットは正妻に、 は妾にしようと思っているんだ。仲良くやってくれると嬉しい」

 あ、だめですわ。

(ん? どうした)

 私もう我慢できません。

(おい……)

 くそみたいなドヤ顔をしてこの男は何を言っているのでしょうか。みなさいな。あの爽やか顔のゴリ友が滅茶苦茶驚いておりますよ。むしろ引いておりますよ。私が何をしようが引いたことのなかったあのゴリ友が!

 それだと言うのに、このクン王子は……。

「どうだ。嬉しいだろう」

「そんな、そんなわけありますか! このクソ王子がああああああああ!」

 ふぅううう。満足ですわ。

 床に沈んだ王子を見るだけでも溜飲が下がりますわ。

(ちゃんと手加減したか?)

 しましたとも。……ちょっとだけですが。

 にしても実況を交換し忘れてしまいますたのははあれでしたわ。拳を振るう瞬間は何も考えておりませんから、みなさまに悪いことしましたわ。

(ああ、だからお前いつも変わるのか。謎だと思ってたんだ。

 実況をもっとちゃんとしてからその気遣いはしないか?)

 ちゃんとしているつもりなのですけどね。ゴリラの爪の垢ぐらいの優しさで

(わからん。その例え分からん。ゴリラの爪の大きさも知らなければ垢があるのかも知らん)

 あら、ゴリ友が何かいいたそうですわね。王子を見ていますけど。

……生きてますわよね。

「……大丈夫ですか?」

「………………肋が折れているけど、生きてはいる」

「…………………………なら大丈夫ですわね」

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