ちょっと何言ってるかわからないんで、人間でいてくれませんか?



「ウホ。ウホ、ウホッ。ウホホ。ウホォ」

「ウホッ」

「ウウホ。ウホゥ〜〜、ウホホ」

「……なるほど。そんなことがあったのか。大変だったな」

(爽やかな顔をしているが、こいつは一体何を分かったんだ)

 まあ、さっきまでの会話を聞いていませんでしたの?

(聞いていたがさっぱり分からない)

 ゴリ友が朝の出来事をを聞きつけて心配して話を聞きに来てくれたから、何があったのかをお話しいてたんじゃないですか。

(その説明でお前が突然ウホウホ言い出したりするから、俺にはお前ら二人がゴリラであることしか分からなかったんだ)

 説明をすばやくすませたかったもので

(そうか)

「それよりヒロインのことはどうするんだ。うまく切り抜けられたようだが、その様子だと今後を何かを仕掛けてくるだろう。

と言うよりもう仕掛けられたな」

「と言いますと?」

 あの朝の一件以外は今のところヒロインには何もされていないのですが。この私の美しい髪を見せてあげたのでしばらくは何もできないはず

「これは今日ではなく昨日のことなんだが、昨日お見舞いに行った後、また学園に戻ってきたんだ。そしたらヒロインが王子の事を待っていた。王子はあんなことの後だったからな。ヒロインから話しかけられてもスルーしようとしたんだが、それが急に抱きつこうとしてきて……。もちろん抱きつかせることはなかったんだが……。

 その後から妙に王子の周りをチョロチョロし続けたんだ。だから変なことされないように見守ってたんだが、だんだん王子の様子がおかしくなっていてな。ヒロインに話し掛けだしたんだ。

 それまではクイーンリゼットってうわ言のように呟いていたんだが。」

(そもそもそれは最初から様子がおかしいのでは)

 通常に戻ったようにしか見えませんわね。今までがどこぞで頭でもぶつけて壊れていただけのように思えますわ。

(その場合それをやったのはお前だがな)

「それからヒロインとやたら仲良くなっていてな。ヒロインに傾倒している様子もあるんだ。俺がいるのも嫌がりだして、ついにはクビにするとまで言われて追い出された。

 お陰で今お前の所にこれたわけだけどな」

「それはかなりやばいですわね。でもいきなりどうしてなのかしら。あなたをクビだと言いだしたとなると正常に戻ったというわけでもないようですし」

 あ、いえ、元々が頭常春男でしたから、それはそれであり? でもゲームで騎士ルートに進んでもクビは言い出されなかったはずですわね。ん〜〜王子に何かあったのでしょうか?

「ヒロインが何かしら仕掛けたんじゃないか?

 魔法が使えたようだしな。小さいし簡単に折れてしまいそうだと思っていたが以外に強そうだな。

 これならヒロインなのも納得だ」

「あら? もしかして強いのがタイプなんですの?」

「強いのがいいわけじゃないが、弱いのよりは好ましいな。それよりヒロインが何をしているのか分かるか」

「そうですわね……」

 何かをしているとしてなんなのでしょう。人の心を操る系の魔法もなくはないですが、どれも相当な力のものですから、金縛りをかけた彼女の魔力で考えると使えるものではないのですよね。

 弱くしていた可能性もありますけど……。

 でもそれだけの力があるのなら私にもっと攻撃してきてもおかしくありませんし……、あの時あんなにあっさり身を引くとはおもえませんわ。

(...... もしかしたらなんだが、あれじゃないのか?)

 あれ?

(ゲームの中で何かへんなアイテムあっただろう。キャラの好感度をあげるみたいなアイテム。確か香水の形をしていたか?)

 ああ。そう言えばそんなものもありましたわね。

 にしてもよく覚えておりますのね。ゲームはちゃんとみていないんじゃなかったのですか。

(香水をつけるだけで好きにさせるなんてえげつないものあるなって思ったから覚えていたんだ。

 まさかヒロインがそれを使うとは思わなかったが……。やつもゲームをプレイしていたような感じだったからな。可能性はあるだろう)

 そうでしたわね。同じではないと思いますが……。

 でもよくやりましたわ。ヒロイングッジョブです!!

 これで王子を断罪、婚約破棄できますわよ。

(ちょっと可哀想に思えてくるな)

 あら? ではあなたが王子の相手を毎日してくれますの。それなら別に結婚しても良いのですけど。私は自由に過ごしますから。

(断固として拒否する)

 でしたら婚約破棄一択ですわよ。

「どうしたにやにやして。ヒロインが何をしたのか分かったのたか」

「ええ、恐らくですが、ゲームででてきていた好感度をあげるアイテムをつかったのでしょう。分かりやすく言うと惚れ薬ですわ。形は香水タイプだったとのことですから、匂いを嗅がせることで効果がでるものかもしれませんわ。

 あら? でもそうするとゴリ友にも効果が出ていてもおかしくはありませんよね?? どういうことでしょうか」

「なるほど。それで王子があんなに急に態度を変えたのか……。そう言えば俺も思っているよりはいい女だな的な事を思った気もするな。でもお前の敵だと思っていたし、それに……。好意的には見えなかったから効果がないような形になってしまったんだな。あまりこっちには近づいてこなかったし、王子にすぐにクビだと言われて追い払われたからな。

 それでどうするんだ? この機会にヒロイン共々王子をやるのか」

「さすがですわ! ゴリ友! 友を裏切らないその心意気素晴らしくてよ。私の考えていることも分かってくださっていますし。

 今日から本気を出しますので応援してくださいまし」

「ああ、できることがあれば手伝う」

「ありがとうございます。

 ……そう言えばゴリ友は狙われておりませんの?」

「話しかけられたことはあるんだが、俺は王子の護衛やトレーニングに忙しい。余計なことにかける時間はないし、お前に対して何の興味もない。むしろ男に媚をうることだけを考えてる奴は嫌いだといったら近寄ってくることはなくなった」

(……つよ。どんなメンタルしてたらそれ言えるんだ)

 さすがゴリ友ですわ。メンタルまでゴリラですわ。

 しかもそれをさわやかな声でいえる所が余計すごいですわよね。正直表情がやわらかいわけではありませんから、顔が爽やかに見えるだけでしょうが、なんにしろ彼女に言う時もさわやかだったんでしょうね。

 それはもう春の風のように。

(ああ、間違いないな)

「そう言えば今日はもう一つ間きたいことがあったんだが、昨日の王子との会話まるで青柳みたいだった。

 もしかしてお前の中に青柳がいるのか」

 聞かれておりますわよ

(いないと答えてくれ)

 いいのですの

(それがいいんだ)

「いませんわよ」

「……そうか、よかった。王子を殴る必要がなくなった」

 あら、気のせいかしら。一瞬寒気がしましたわ。

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