想像以上の可愛さで倒れてしまいそうですわ
はてさてこれは一体全体とういうことか分かります。
(……知らないが、ゲームがゲーム通りことを進めろとでも言っているんじゃないか? メタ的な展開とかそういう奴)
なるほどですの。
今、私の目の前には何故かヒロインがいますわ。
朝から学校行きたくない。王子と会いたくないと嫌がる引きこもりを説得して何とか来た早々の出来事です。
(待て。お前だって駄々をこねていただろう)
何のことか忘れましたわ。
それよりこのヒロインはどう対処するべきなのかしら? 名前を呼ばれたので思わず立ち止まってしまいましたが、今ヒロインと話す気分ではないのですよね。王子と仲よくなられてからではないと辛くあたる理由もありませんし……。
(何か言えるとしたら先生と懇意にしているところだけか? 個人授業を受けているって話は耳にしたが……。だがそれもこっちが何かを言うほどのことでもない。無難に他の奴らと同じ態度で接するのが今のうちはいいんじゃないか。
あえて嫌われておいてもいいがその場合はこっちが後々不利になるしな)
そうですわね。
それにあの私……。ずっと胸に秘めていたことがあるのですが、
(何だ)
「あの〜〜。急に呼び止めてしまい申し訳ありません。でもお伝えしたいことがありまして、私……」
この子、ちょー可愛くないですか?
画面で見ていた時も可愛いと思っていましたが、こうして実物を見てみると本当に可愛くて愛らしいです。流石ヒロインですわ。
(どうでもよい……)
「あのですわ」
緊張しているのかもじもじしているのもまたよいですわ。
(は〜〜。お前にそんな気持ちがあるとは。弱そうでいやですわて言う方が似合いだと思うが。ゴリラなんだから
いや……。そう言えば……、女子をつれ歩いていたか? あんまり見ていなかったが……)
男は強くてなんぼ。筋肉があってこそですが、女の子はか弱くたっていいではないですか。強い女も大好きですけど守りたくなっちゃうような子だって大好きです!
ちょっと頬が赤いのもまたいいですわ。そんなに緊張なさらなくてもいいのですが、この姿も愛らしくて言葉をかけづらいですわ。ずっと見守りたいです。
どうした良いのでしょうか?
(知らん)
「実は私、クイーンリゼット様のことをとても尊敬しておりまして……、前々からその、もっとお話をしてみたいと思っていたのです。
もしよければ、私とお友達になってくださいませんか」
ズッキューン!
かわゆい! ああ、どうしましょう。キュービットの矢に胸を撃ち抜かれたような気分です。胸が飛び出してしまったように高鳴ります。かわ、可愛すぎますわ。
あれですわ。あれ。
(どれ)
女にこうして戻っておりますけれど、三年間男として過ごしていたわけでして、その間に生えてしまいました私の心のち(あああああ)がぼ(あああああ!)てしまいますわ!
(何を言い出しているんだお前は!)
だってだって心のち(ああああああ!)
何なのですの。
(五月蝿い! お前がへんなこと言うからだろうが!)
これだから童貞は。下ネタに耐性もなく困りますわ。
「あの……」
ああ、しまった。可愛い子の事を忘れてしまっておりましたわ。こんな可愛くてち(あああ! いい加減にしろ!) もう五月蝿いですわね。
「ごめんなさい。驚いてしまって。すぐに返事ができませんでしたわ。そんな風に言ってくださる方は初めてだったから」
「そんなクイーンリゼット様以上に素敵な女性なんてこの世にはいませんわ。ですから……」
可愛い。きゅんきゅんしますわ。
「ええ。是非私とお友達になってくださいな」
(おい。いいのか? こいつは)
いいのですわ。ヒロインと王子がくっつけば私は婚約者と友人に裏切られたことになり、より悲壮感が増して二人への批難も強くなりますからね。
何よりこんな可愛い子を振るなんてそんなこと私にはできませんの。
ああ。陶磁器のような白い手が私の手に触れようとしてますわ。こんな可愛い子と握手ができますなんて、なんて幸せなの。手袋越しなのが残念ですわ。
(外すなよ。ゴリラの手なんだから)
分っておりましてよ。ってあら?
(おい、どうした。あまりに柔らかくて声も出ないのか)
そうだったらよいのですけど……、どうしましょう。動けませんわ。
(は?)
「ふう。どうやら転生者っぽいし、上手くいかなかったらどうしようって思っていたけど、上手く言ってよかった。単純なバカで有難う」
(は? こいつ)
あらやですわ、あんなに可愛くて純粋無垢な笑みを浮かべていましたのに、とてもあくどい顔をしますのね。口元をつりあげてまさに悪役の笑顔なのですわ。それをするのは私のはずなのですけど。
でもその顔もとても可愛らしいですわね。
(言っている場合か! こいつなんだか)
バチン!
おや、自分で顔をたたきましたね。あんな力一杯たたいて大丈夫でしょうか? くっきり跡まで残してしまって……。まあ、あかげでやりたいことが見えましたわね。
(見えたってこいつは何をするつもりなんだ)
古典的でありふれていて、今どきは逆に創作でももう見ないんじゃないかと思うような手ですわよ。まあ、見ていなさい。彼女今から叫びますので。
「きゃああああああ!!」
ほらね、そして人が来ます。やたらと人がいないとは思っていたのですが、恐らく人よけの魔法でも使っていたのでしょうね。
今度感知魔法を習得いたしましょう。
ああ、わらわらわらわら人がきますわね。モブを描写するのは大変なのですよ?
「どうしたのですか」
「先程の声は一体……。クイーンリゼット様!あ、それにリカーシャさんも……。お二人共どうされたのですか」
「その顔は……」
わらわらわらわら。本当に五月蝿くて駄目ですわね。
(のんきを事を言っている場合か! これだと俺達)
悪者にされてしまうのでしょうね。本命も来ましたし……
(本命?)
「なんの騒ぎだ!」
「これは……。どういうことか説明してくれるか、クイーンリゼット嬢」
「リカーシャ! 大丈夫」
攻略対象者達ですわ。
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