正解が分からないので暴力しかない気がしてきた
「クイーンリゼット、入るぞ」
「ァア? ……どうぞ)
(危なっ。素がでかけたぞ)
完全にでていましたことよ。見てくださいまし、大きくドアを開けた王子がそのままの姿で固まっていますわ。
愉快愉快。
そのまま閉めて回れ右してくれたらいいのにですわ。
(だって急を開けるから。ノックも知らないのか)
王子が会うのにお伺いをたてる相手なんてあまりいませんからね。誰にだってアポなく訪れては困らせていますわ。
「クソ野郎が」
あらあら。声にでてしまっていますわよ。お口が早いこと。
王子がまた固まって豆鉄砲を食らった鳩のような顔をしています。見たことありませんけど。昔の日本人は鳩にどうして豆鉄砲などを食らわしていたのでしょう。
(食べるためじゃないか?)
「それで殿下。 何をしに来ましたのですか? 私はみての通り体調がすぐれないので、できれば消えて……、帰ってほしいのですが。お分かりいただけませんか?」
圧がもはや体調不良者のものではありませんことよ。もう少し抑えませんと。ほらほら。王子が戸惑って中に入れませんわ。うちの護衛たちもドアが閉まらないとらくできず困ってしまいますわよ。
彼らはこの部屋の廊下には滅多に親や客人が立ち入らなくなったのをいいことに最近は立っている間トレーニングしていますから。
(お前がゴリラになるのですから立っている間もトレーニングしなさいと余計なことを言ったからだろう)
おっほほほ。何のことですの。分かりませんわ。
「そんな所に棒きれのようにつっ立っておられず、早く帰るか、入るかのどちらかをしてくれませんか? 部屋が寒くなるのが分かりませんの」
「あ……その、すまん」
(チッ。入って来やがった。帰れよ)
全くですわ。誰ものぞんでいないのにきてなんのつもりなのでしょうか。ゴリ友も止めてくれても良かったのに。そんな済まなさそうな顔をして入ってきても許しませんことよ。
(って、おい。待て。何で群岡が)
何でって。だってゴリ友は王子の護衛なのですから、王子とともにくるのは当然でしょう。先程からちらちらゴリ友のよい筋肉が見えていたことに気付かなかったのですか。
(人のことを筋肉として見ていないので気付かなかった……。
チェンジで)
いやですわよ。今日の王子の相手はあなたでしてよ。ほら、早く相手をしてあげてください。さっきからそわそわしておりましてかわいそうですわよ。それに何か話したいことがあってきたのかもしれませんからね。
ほら。
「はぁ〜〜。それで何のご用でございますの? こんな急に来まして……」
「用というか……。お前が体調をくずして休みだと聞いたもので具合はどうかと見舞いにきたんだ。見舞いの品も持ってきたぞ」
「はあ? はああ? 三ヶ月。意識不明だったのに一度も来なかった奴が見舞い?? 何のじょうだ……そんな面白いジョーク言わずともよろしいのですよ。それで本当のことをおいいになって
な・ん・の・た・め・に・き・た・の・で・す・か?」
圧が強いですわね〜〜。恐いですわ。王子がまるでチワワのようですわ。
まあ、いつ見ても私にとっては王子は小動物も同じでありますが。さすが陰険でございますのね。心なしがゴリ友も怖気づいておりますことよ。
あのいつも爽やかな笑みでそうかと流す男ですのに。
(ええい。うるさい。俺は今王子と話しているんだ)
王子と話しているって……、王子は放心して会話すらできませんことよ。まぬけな顔をさらしていますわ。
「殿下。申し訳ありませんが、私、体調が悪くて起きていられませんの。早く用事を言うか、帰ってくれませんこと。
それでなんですか? 具合が悪く寝込んでいた私を起こしてまで伝えたい用事って、きっととても大事なことなのでしょうね。
それをこんな格好でなんてごめんなさい。何しろ私具合が悪いもので……。今もしんどいのを我慢しておりますの。
ですから早く。早くお云いになってくださいませんか」
「いや、……その〜〜」
いいですわよ。いいですわよ。捲し立てが凄いですわ。陰険!
王子がたじたじでおもしろいですわ。ギッタンギッタンにやっておしまい!
「まさか用事もないのに来たのですか?もしやあの見舞いに来ただなんていう、臍で紅茶が湧かせてしまいそうなジョークが本当でしたの? 本気でそんな頭のおかしいことを言っていましたの?
ふざけないでくださいませんか
三ヶ月も意識不明だった間一度も見舞いに来てくださらなかったと知ってどれだけ悲しかったか分かります?」
実際は社会のことを考えて怒りはしても悲しくはありませんでしたけどね。
「それ以前も私に全く興味なんてなかったくせに。それがなんですの。ジロジロ見てきて。お見舞い? 気持ち悪いだけですわ。いま一度、今までの貴方の行動を振り返ってみたらいかがです。それで治るなどとは思いませんけど。
むしろそんなことをしましたら、もう二度と外出できなくなるかもしれませんが。それでも王となるもの必要なことかもしれませんわよ。
それで他に用がないのなら帰ってくださいな」
ブラボー! 最高ですわよ。流石ですわ! 最高にお強くてよ。筋肉がなくとも心に筋肉がついておりましてよ、ひゅ〜〜!!
(すまん。言い過ぎた。ここまでぼこぼこにして何かあったら俺の責任だ。ヒロインとくっつけてからボコボコにするはずだったのに……。
口が開くと止まらなくて)
いいのですよ。いいのです。私もあなたの計画を筋肉でぼろぼろにしましたし、おあいこですわ。筋肉でボコりあったのですよ。川原ではありませんが筋友にはなりましたわ。
(そんなものにはなりたくない)
それに王子はヒロインとくっついてくれそうになかったですからね。逆に今日ボロクソにされて私を嫌ってヒロインに走るような流れがあるのかもしれませんわ。
ほら、見てくださいまし。王子もあんなに顔を真っ赤にさせて………………。
真っ赤にしておりますけれど……。
「あ、そ、その、すまん! お大事に!」
バタンガタン!
真っ赤な顔をして去っていきましたけど……。けどですわ。
あれは惚れましたわね。
一度惚れられてしまいましたので分かりましてよ。あのバカ王子惚れましたわよ。え、え……。護衛も置いてさりましたけど……。えええ!
ゴリ友、やれやれじゃありませんことよ!
えっ。え? まちなさい。ゴリ友をひきとめ……たところでどうしていいのかわかりませんね。
………………おめでとうございます。
(殺してくれ)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます