再会の挨拶は勿論マッスルですわ

……え? 今青柳って呼ばれたか。俺達。青柳って俺達の名前だけど……

(私達のというよりは貴方の名前です)

 何でこいつそれを、え? どう見ても騎士だよな。あの女好きのクソ騎士だよな。殴られてまともになった奴だよな……。


「……青柳じゃないのか?」

 不思そうにきかれるが、こっちが不思議なんだが。誰だ。首を傾けられても分からん。


「……誰ですの」

「あぁ、俺はウホっ」


 いや、誰!? 今何故マッスルポーズした。ウホッじゃないんだよ! ウホッて誰だよ!


「ま、まさか」

 いや、分かったのか⁉ 何で!?


 ただマッスルポーズしただけだぞ。両腕を肩より上に上げて力瘤をみせつけてきただけなんだぞ。たしかフロント何とかってポーズをしているだけだからな。これで誰か分かるわけ無いだろう。


 くそやたら爽やかででこれで分かるだろうって顔をしているのが腹立つ。誰なんだ。


「ゴリ友ですの」

「ああ。その様子だとお前は青柳でよさそうだな」

 だから誰だ!! そしてもうマッスルポーズはいらん。変えるな変えるな。前で腕組んで腕の筋肉見せびらかしてくる格好するな。

「まあ! 本当の本当にゴリ友ですのね。吃驚ですけど、でもそのひきしまった筋肉を見ると納得してしまいますわ。シャツを着ていても分かる素晴らしい筋肉。クズのくせにいい筋肉をつけるようになったと思ってましたけどゴリ友だったなんて。

 どうしてここに」


 聞く前に俺に誰か教えてほしいんだが。後にじり寄るな。手をわきわきさせるな。変態っぽいだろう。そして誰か分からんが騎士も服のボタンを外すな。何も言ってないのにいいぞをするな。シャツをはだけて筋肉をだすな。しまえしまえ。


 はたから見たらゴリラが美男子を襲ってる図だぞ。あ、いや、シャツを脱ぐとかなり筋肉エグいな。たんにゴリラがゴリラを襲っている図なのか。いや、そう言えばこちらのゴリラも今は美少女のフリしてるんだったか。ええい、混乱してきた。

 誰だこいつ


「覚えてないか。一緒に帰ってた所で事故にあったんだが」

「事故? 一緒に帰ってた所までは覚えているのですが……」

「かなり強くうったから記憶が飛んでいるのかもな」

 筋肉もみながら話すな。ってか待って。一緒に帰ってって……。ここで目覚める前の時の話だよな。それって……群岡!?


 まさか群岡なのか。嘘だろう。確かにこいつと一緒に筋トレしていてゴリラになっていたことは知ってたけど……。ウホッとか、お前そんなことする奴じゃないだろう。そこまで脳筋ゴリラじゃないだろう。ゴリ友なのはいいが、そんな……。

(年月とは時に無情なものなのです)

 お前のせいだろうが!!


 嘘だろら群岡が……。俺の友が……。

 群岡って言えば中学からの仲で、ガリ勉眼鏡だって別にメガネもかけてないのにからかわれていた俺を笑わずにいてくれて、すごいなって俺も見習わないとなって一緒に勉強してくれるといい奴だったのに……。

 最初は俺が教える側だったのにいつの間にか二人で教えあうようになったりして……。たまには息抜きもした方いいんだぜって色んな所につれていてくれた良いやつだったのに……。

(そう言えば筋トレをはじめるとき、やっぱり二人でやる方が楽しいからと言ってましたわね)

 群岡……。だからって。


(それよりゴリ友の話をきかなくてもよくて。どうしてここにいるのか私はとても知りたいのですが)

 はっ。そうだった。どうしてここに。事故がどうしたんだ。


「お前の家の近くで急に動き出した車にぶつけられたんだ。それで俺達二人共吹き飛ばされ地面に衝突したんだ」

そんなに大きな事故だったのか!? 俺達の体は。

「あら、そんな大事故でしたのですか。ではもしかして死んだのですか」

「くわしくは知らんが無事だったんじゃないだろうか。頭から血が出て意識を失いそうだった時、うっすらとだったがお前がふらふらながら起き上がって救急車ーー。救急車ーーって叫ぶのが聞こえたから」

「まあ。そんな事をしましたの私。流石ですけど、随分原始的ですわね」

「急だったからな」

 それですますな!! なんなんだその状況は! どうなっていたんだ、お前の筋肉は!? 


「あれだけ元気にさけべたから多分お前は死んでないだろう。俺も体は無事だったと思う。何って言うのか……。お前の魂のようなものが何処かに引っ張られていくのが見えて追いかけてしまったんだ。

 お前といるほうが楽しいからな」

「そうでしたの」

 群岡……。


「所で、青柳。今のその体がお前の元の体なのか? 元は女だったんだな」


「はい?」

 はっ? 何言って……


「あ〜〜。お前……青柳ではないだろう? 青柳は青柳だけど、中学三年の頃ぐらいから別人になっていただろう。だからもしかしてその体から青柳の体に入ったのかなと思ったんだ。だとしたら大変だったな。

 青柳は筋肉なかったから」

 え? いや、何当然のようにお前はいっているんだ。ちょっと爽やかな笑み何て浮かべている場合じゃないだろう。何でお前

「どうして……私のこと……」


「そりゃあ、分かるさ。青柳とは友達だったからな。あいつは……いくらいじめられてるからって筋肉に走るようなやつじゃない。

 もっと陰険なやり方でやり返すやつだったから」

 む〜ら〜お〜か〜! 悪かったな、陰険野郎で!!

 ちょっとしんみりしたの返せ!!


「いじめっ子のほとんどがバラけた高校に行くってのに、同じ場所に行く奴らを丸めこんで高校での様子や、受験する大学を教えて貰う約束を密かに取り付けては、四年後みてろよって、笑う奴だったから」

「あ〜〜。確かにそう言われますと陰険さがたりませんでしたわ……」

 黙れ!! 誰が陰険なんだ! 全部いじめてきた奴らの自業自得だろうが! 俺はやられた分奴らにやり返そうとしただけだ! 暴力だって振るってないんだぞ!


「だから分かった。見た目は青柳そのものだが青柳はじゃないんだなって」

「なのになんて私に付き合ってくれたのですか?」

「青柳ではなくとも……それでもあいつの傍にいたかったんだ。それにいつか帰ってくるんじゃないかと思ったからかな。


 だが、失敗したな。


 傍にいたいから追いかけてきたが、よく考えたら青柳は向こうの体にいるよな。あいつに会えないのは残念だな。

 それでもこっちの青柳はよろしく頼む。

 一緒にゴリラを極めよう」

 極めるな!!


 何でしんみりとした話の流れでそっちに持っていくんだ!! すごくしんみりとした悲しげな顔をしていただろう。そのまますすめ! こっちにもしんみりさせろ!!

 爽やかに笑うな!


 笑っていいけどゴリラはいらん。クソ。女子全員誑かしそうないい顔をしといてうちのゴリラと一緒になろうとするな。前の世界だって何人の女ががっかりしてたと思っているんだ。

 喜んでた女もいたけど。


(まあまあ落ち着きなさって。それよりこの体使ってみます? 実況が交代できるのですからそれもできると思るのですが。

 話したいこととがあるのではなくて)

 ……いや、その必要はない。

 俺のことも群岡には伝えないでほしい。それより王子をぼこったんだ。もう元に戻ってもいいだろう。後いい加減ここから出ないと来たヒロインと鉢合わせになるがいいのか?)


 あ、そうでしたわ、私としたことが忘れていました。王子はまだ死体のままですわね。早く隠れないとですわ。

「ゴリ友。説明は後でしますから、ちょっとこっちに来てくださいませ」

「ああ、いいが」

 はっ、すごいですわ。


 ついゴリ友の腕をつかんでしまいましたが凄い筋肉。これぞ肉の盾ですわ。

 この筋肉うっとりしてしまいますわ。

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