ゴリラは力技が好きなのですわ

何だかんだありましたが、

(あったか? ただ王子に監視され、家じゃ筋トレするだけだっただろう。親にも未だ面会謝絶されてるし)


 うるさいですわよ。

 私が何だかんだあったと言えば見てる人には何だかんだあったことになるからいいのです。何だかんだあった方が面白そうでしょう。

(けっきょく何が起きたのか分からないのに)

 そこはいいのですよ。


 それより何だかんだありましたが、やっとこの日が来ました。ヒロイン登場の日です。待ちわびましたわ。


 入学したその日にヒロインは王子と出会い、そしてそこから攻略人物四人に会い愛をはぐくむ。私はあいの手を時々入れながら最終的に全員をボコるというのをどれだけ楽しみにしていたことでしょうか。

 その日の王子達を思い浮かべるとドキドキします。

 これから一年がたのしみですわ。


(そのことで俺はずっと思っていたんだが……、

 出会えるのか?)

 え?


(いや、ヒロインと王子もしかしたら出会えないんじゃないかって……)


 ……何を言ってますの。

(だってヒロインと王子が出会うのは、王子が裏庭で寝ている時何だろろ。最近は王子もまともに授業にでて裏庭で寝たりなんてしてないから……

 どうやって出会うんだ?)

 ……そうでしたわ。どうしましょう。出会わなければ物語が始まりませんのに……。


 くっ、何であのバカ、バカのくせに真面目に授業でるのですの。


 まあ、でていると言っても私のことじろじろじろじろ見てくるだけではありますが。

 ああ、どうすれば……。

(別にもう出会わせなくてもいんじゃないか、最近は評判いいだろう。騎士の方なんてまじめもまじめ。堅物メガネみたいなレベルで働いてるし、お前が心配していた国の崩壊なんてことにもならないんじゃないか? ヒロインと出会わなけりゃそれこそ常春バカにもならず、お前が裏で操れるだろう)

 いや、ですわ。


 私はもうあのバカに愛想がつきましたの。絶対婚約破棄させてやるのです。その為にはあのバカにはやらかしてもらわなければならないのですよ。

 なのに……、まさかこんな所で躓くなんて。


 はっ。ふっふ、いいこと思いつきましたわ、行きますわよ

(どこに)


 行けば分かります。あ、あと私ちょっと色々しいので交代しますわ)

 いや、だからそれはありなのか?




「おい、どう言うつもりだ」

 まじで何をするつもりなんだ?


 ここはヒロインと王子が出会う予定だった中庭だよな。そんな所に王子をつれてきてどうするつもりなんだ。王子もめちゃくちゃ怪しんでるぞ。

「こんな人気のない所で俺に何をしようってんだ」

 いや、なんかちょっと気持ち悪いな、お前まじでなにしたんだ。俺がか寝ている間に何かしただろう。

 微妙に頬が赤いし、にらんできてるわりに口元が変にむずむずしている。何だこの気持ち悪い男は。

(知りませんわよ。何ですのこの気持ち悪いクズ。

 誰です王子を変にしたのは)

 お前だろう。


 そしてお前は何をするために王子をつれてきたんだ。

(やりたいことは簡単ですが、ちょっと気持ち悪くてやる気をなくしますわね。ハッ。これが王子のやり方ですの。

 やりますわね。


 でも、そうと分かりましたら、大丈夫でしてよ)

 いや、そんなつもりはないと思うけど……


(やりますわよ)

 何をするかぐらい教えろ!!

 てか何で急に走り出すんだ。王子の奴面食らっているぞ。えっ。てかこれは王子に突っ込もうとしているよなお前、まじで何を……


「王子、永遠にお眠りになさって!!」

 ゴン!

「ごほっ」


 かんかんかんK.O。これは見事なKOです。王子起き上がれない。見事過ぎるストレート。抉るようでしたって……何やってるんだお前は。


 何で王子を殴ったんだ。泡まで吹いて倒れて何かあったらやばいぞ。

(何でってここでこうして寝てたらヒロインと出会いますでしょう)


 ………………え、お前まさかそのために。……王子、自目むいてるぞ。


(白目むいている王子格好良いですわ)

 せめて目は閉ざせ。恋が始まらんだろう。

(仕方ないですわね)


 ……目を閉じても死体は死体だな。ヒロインが死体でも好きになってくれることを期待しよう。世の中ゴリラもいるから以外といけるだろう。

 ヒロインが来ないうちにさっさと去ろう。見つかるとやばい……。あ、やばいか。

(やばいですわね)


 王子をおいて去ろうとしたのに後に騎士がいた。驚いてるし、もしかしなくても犯行現場をみられたかもしれない。

 見られていなくてもやばい所を見られたのは変わらない。王子を置いて去ろうとしていたからな、悲鳴でも上げればもしかしたら行けるか? 嫌。でももう遅いか。 どうするべきか。


 驚いてるからまだ動きそうにないが、早く先手を打たないと。

(仕方ありません、王子と一緒に騎士とも出会っていただきましょう。一石二鳥ですわ)

 やめろやめろ。本当にただの犯行現場になる。死体は王子一人で充分だ。

(では、どうするのです)


 一か八か。ここは涙目で王子が死んでいますって駆け寄っていこう。力づくで押せばもしかしたらなんとかなるかもしれん。お前へのトラウマの一つや二つ抱えているだろうし。

(ゲロでもでそうですが仕方ありませんわ)

「エン・フタワール様、王子が……」

「お前もしかしなくても青柳か?」

 え?

「は」

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