格好良い。何処が? ただのクソでございましてよ

 ざわめいた辺りがどんどん静まり返っていく。事態が分かってきたのだろう。みんなクソ騎士とこっちを見ている。女子の視線が恐いんだか、前から思っていたが女子の視線ってどうしてあんなに怨念を込めることが出来るんだろうな。

(知りませんわ。それよりあのクソの顔を見てくださいまし。

 間抜けに口を開いて笑えますわよ)

 今は一人しかいないとは言えクソが多いんだから。ちゃんとクソ騎士まで言えよ。どのクソか分からないだろう。


 ああ。でも確かに間抜けだな。鳩が豆鉄砲って言葉あるけど鳩に失礼なほど問抜けな顔をしているな。

 女が俺に歯向かう何てって考えてそうだ。って、構えるの早くない。攻撃はクソ騎士が我に戻ってからにしろよ。


 じゃないと不意打ちだのなんだのと五月蠅くなるぞ。

(分かってましてよ)


「……これはどういうことだ」

 お、何って言っていたら戻ったな。声が裏返っているけど。

(今、やってもいいです)

 まだだ。


「どうも何にも由緒正しい決闘の申し込みですが、そんな礼儀すら分からないのですか?」

「決闘だと?

 女であるお前が王子直属の護衛騎士である俺に決闘を申し込んだのか。正気か」

 あ、分かってるんだ。


 実は自分がどんな地位にいるか分かってないから王子の側を離れるんじゃないのかって思っていたがわかっているのか。分かっていて離れる上になんなら護衛騎士ってことに胡座をかいていたりするわけか……。クズだな。

「そうですわよ。


 ですから早く来てくださいませ」

「はぁっ……」

 頭抱かえてため息なんてついているけど、そうしたいのは周りの大人達何じゃないのかって思うわ。よくこれで好き勝手できるな。

 貴族の権力って奴か?


「熱をだしてずっと寝込んでいたと聞いていたが頭がやられたらしいな。

 今、医者を呼んできてあげましょう」

「必要ありませんわ。まさか負けるのが嫌なのですか」

 優男風で見えるけど、そうでもないんだな。人前で人の頭がおかしいとか言うなんて。まあ、こっちも人前で決闘を申し込んでいるからあんまり言えないけど。


 周りのざわめきもやばいな。


 一度やらないと落ち着きそうにないが、クソ騎士はそのへんに気付いてなさそうだな。

 周りなんてどうでもいいって感じか。

 にしても顔を赤くして煽りに弱すぎだな。


「恥をかきたくない気持ち痛い程わかりますけど、このままでも恥をかいてしまいますわよ。

 さっさと負ける覚悟を決めていただいてもよろしいですか」

 まあ、こんな雑魚相手ならそれでいいだろうが、煽り弱くないか? もっとえげつないのいけるだろう。


 もう、やる気にはなっているみたいだけど。

 何が仕方ないのか。格好つけて剣を抜くのなんて俺からしたら間抜けでしかないんだが? あいつお前のどこに剣が見えているんだ。


「軽くやってあげるよ」

 キラキラシャラーンって感じなのか。女がきゃあきゃあ五月蝿い。丸ごし相手に剣とかすげぇクソ野郎にしかみえないがこの世界は違うのか?

(まさか最高に格好悪いに決まっているじゃないですか。しかもこれからそれで負けるのですしね)


 おっと、早速クズ騎士の攻撃だな。本気でやるつもりはないのか平たい部分で狙ってきているようにも見える。それをすばやく避けてがら空きの脇腹に挙をたたきつける。

 体が飛んだ。骨の一つや二つはいったんじゃないのか?

 がんごんって跳ねている。手加減したのか。

(後でなにか言われても嫌ですからね)


 にしてもまた奇妙な顔をしているな。余程信じられないらしく地面や自分の体を何度も見ている。

 周りはもう五月蝿すぎて実況する気にもならん。


「ちょっと手加減しすぎたか。だかこれで終わりじゃない」

 ふらつきながらよく格好つけられるな。ろくに訓練もしてないのに天才のプライドみたいなのあるのか? 俺はこの体だろうとケンカになればすく白旗をあげるが。


 ふらふらしつつまた向かってくる。

(もう少し粘ってもいいのですわよ。この肉体美なら適当に動いてもその辺の雑魚なら倒せますわよ。

 ちなみにこのゴミクズはそのへんに落ちてます)

 こわっ


 クソ騎士が突進してきて刃を振り下ろす。ちょっとピリつくような感覚があった。映画を見ているようなものなのであんまり感じないが、殺気とでもいう奴なのかもしれない。

 さっきよりも動きは早いけど、ゴリラはすべてを見きっていて、そしてまたできる隙間に今度も拳を叩き込んでいた。

 今度は屋根にまで飛んでいきそうな勢いで飛んだ。

 地面に叩きつけられそうだがいいのだろうか。


(風魔法で防御はしてあげるので大丈夫ですわ。ついでにちょっと方向を弄って……)

 おお。すごい。飛んでいたのが足元に戻ってきた。んで持ってその腹に足を乗せるのか。別にいいが足は気をつけておけよ。足首少しでてるから。

 ゴリラが見えないよううまいこと体で隠しておけ。


 そんでどうするんだ。もう落ちる寸前だが。わざわざこんなことして。


「いい気味ですわ。でも騎士様こんなにもあっさり負けてこの国が心配ですわ。

 まあ、仕方ないことですわよね。天才という事実だけに胡座をかいていただけの屑なのですから。

 もう二度と騎士なんて名乗るのではなくてよ。このクズがよ」

  何だ。煽りか……。

(さあ。終わりですわ。早く帰りましょう)

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