第15話 採用結果

 一方、θは自転車に乗って自宅からパート先のスーパに向かっていた。


 とそんな時、θのスマホから電子音がなった。θは一旦、自転車を降り、電話を取った。


「もしもし、佐藤です」


 θが電話に出ると、「佐藤θさんですか?株式会社『Verse』の中途採用に来ていただき、誠にありがとうございます」


「はい」


「採用結果ですが、佐藤θさんを採用させていただく事にしました」


 なんと面接の結果は「採用」という二文字だった。


 やったー!これでパート生活は終わるぞ!


 θは大喜びで自転車に乗ってパートに向かった。


 パート先でθは中途採用の試験が受かった事を話すと、阿良々木店長は「佐藤さん、おめでとうございます」と喜んでいた。


「ああ、ありがとうございます!」


 θは阿良々木店長にお礼を言った。


「佐藤さん!Verseという大手に合格したんですね!じゃあここも辞める事になりますか?」


 王がθに質問をしてもθは無視をした。阿良々木店長はθの態度を見て「ん?」と怪訝な顔をした。



 パートの仕事を終えると、「佐藤さん」と阿良々木店長に呼ばれたθは「何ですか?」という表情で店長に訊ねた。


「王さんをほぼ毎日無視するなんていくらなんでも酷すぎます。佐藤さん、王さんと何かあったんですか?」


 阿良々木店長はθに問いつめた。


「いいえ、特に何もありません」


「じゃあ何故、無視を?」


 阿良々木店長がθに訊ねると、θはフフと笑いながら話した。


「私は別にそんなつもりはありません。それに王さんを無視したなんて、店長の思い込みじゃありませんか?」


 θは阿良々木店長の問いを返した。


「王さんは佐藤さんに無視されていると困っていましたよ」


 阿良々木店長が王のことを話すと、θは笑って「だから私、そんなつもりじゃないですよ。もしかして、私が差別しているとでも思っているんですか?」θが阿良々木店長に言うと、店長はムスッと怒った表情になった。


「無視も駄目なんですか?」


「ダメです。なぜ、佐藤さんは王さんを無視したんですか?」


 阿良々木店長はθに聞いた。なぜ王を無視した?あまりやりすぎると、差別では無いか?

 そう店長は感じてしまったのだ。


「無視というか、まぁ単純に王さんが言っていることが気に入らなかっただけです。王さん

 、福島の第一原発事故の海洋放出に関して日本はだいぶ薄めて海洋放出するから中国のよりずっと安全なのによく、休憩室で危険だと言うもんだから、私はただ、まかないで日本の刺身を上げたり・・ほら、農林水産省も『食べるぜニッポン』と言って安全だと言っているから」


 θが話すと、「Verseに就職するなら、王さんにこういう事を止めてください。そこなら差別的行為で懲戒免職になる可能性がありますよ」


 阿良々木店長が話すと、θは黙ったままだった。


 θは家に帰ると、ロボットが「お帰りなさいませ」と出迎えてくれた。玄関を上がり、リビングに行くと、βが机でパソコンを打っていた。


「β?今日もリモート?」


 θはパソコンをしているβに聞いた。


「そう。今、ニタニタ動画の運営しているんだよ。そういえば、うちの新入社員がやめっちまったみたいだな」


 βはパソコンを見ながら睨んでいた。


「あなたが誘った女の人?」


 θはζの事を話した。


「その人だ。先週、うちの会社を辞めたんだよ」


「へーそんなんだ」


 θはよかったという安堵の表情になった。


「何だよ、別に俺、その人に気があるわけじゃないからな」


 βがパソコンを打ちながら、ある日の夜、θはパート先での経験を家で話していた。


「はいはい」


 θはパート後にスーパーで買い物をしてきた商品を消毒し、冷蔵庫にしまった。


「θさん、パート先で何かあったんですか?」


 家のロボットがθにパート先での出来事を尋ねた。


 θは微妙な顔をしながらその日の出来事を詳しく話し始めた。同じ従業員の王さんの事、その王さんの事を阿良々木店長に注意された事を話した。


「そうですか。この件に関してはθさんが悪いですね。立派な差別的行為ですよ。Verseでは人権思想を学ぶための研修があるので、それまでにそういう差別的な行為を止める事が大切です」


 ヒトガタロボットはのっぺらぼうのような姿からθ達と変わらない人間の若い男性に変化した。


「え?今、なんでこんな姿になったの?」


 θがいきなりこんな姿になったのを見て驚いていた。


「実は私、普通の人間の姿になる事もできるんです。もし、よろしければこのような姿でも構いませんよ」


 人間の姿になったヒトガタロボットは塩顔のイケメンであり、これはうちにいたら、変な噂が立つなとθは思っていた。


「あの、のっぺらぼうのままでいいです」


「そうですか。なら元に戻しますね。しかし、Verseの研修であなたが本当に耐えられるのか見ものですね」


 のっぺらぼうになったヒトガタロボットはθを見つめていた。

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