第3話 佐藤γ(11)小学5年生


 佐藤γさとうガンマは川口市の小学校に通う5年生の男子児童だ。


 γは野球が好きで、今年の3月まで少年野球チームに入っていたが、母のθが「受験勉強に集中して欲しい」と言われて今の習い事は4年生の時から通っている塾のみだ。


 γは中学受験にも興味が無く、やる気も無いが、母親に「いい大学に入れる」という理由でやっている。

  γは近くの中高一貫校(公立)は軽ーく合格圏内らしいが、全く行く気がしなかった。というのも友人の土田や石橋、藤野も近くの公立中学に行くって言っているからだ。


 学校は本人曰く「まぁまぁ楽しい」と言う。憂さ晴らしに同じクラスの覡ιかんなぎイオタというトランスジェンダーの女子児童から鉛筆を盗んでいる。クラスの女子は彼女が女子トイレに入らないか心配らしい。


γはどちらでも良いと思っているが、もし、ιが女子トイレに入っていたらそれはそれで気持ち悪いと感じている。


γのがんまりいたずらは担任を始め、他のクラスメイトも咎めることは無かった。それをいい事にγは調子に乗って「あいつらには何もしてもいい」と思うようになった。


 他にもγのクラスには外国人がいる。クルド人のδデルタ・ザクラムだ。θによると、クルド人はユダヤ人のように国を持たない民族らしい。中には「イスラム国」とも戦う人達もいたが、γにとってそれは幼い頃の話なので全くわからない。彼にとっては彼らはゴミの捨て方も分からない迷惑な人達だと思っているので、γはδに対し、飛び蹴りする事にした。


「おい!てめぇがいると邪魔なんだよ!」


「うわっ!」


 すると、δは勢い余って階段から落ちてしまった。が、廊下の向こうから「おい!何をしている!」という声が聞こえて来た。


「なんだ隣のクラスのοオミクロンじゃねーか!細菌野郎!とっとと黒電話を崇拝する学校へ帰れ!」


 なんと俺に声を掛けて来たのは韓οハン・オミクロンという今年の4月に「朝鮮学校」から転入して来た奴だった。γにとって「朝鮮学校」はDPRK朝鮮民主主義人民共和国の指導者を崇拝するヤバい学校だからだ。正直に言うと、こっちに来ないで欲しいと思っている。


δデルタが泣いているだろ!一歩間違えると死ぬところだぞ!」


「何、正義ズラしてんのお前、δに気があるのか?階段から落ちただけで死なねぇーよ」


 γはヘラヘラしていたが、οは怒ってクルド人のδを連れて保健室に行った。


「δ大丈夫か?」


「大丈夫だよ」


「そんな奴の事相手にしなくてもいいだんぞ」


「わかっているよ。でもあいつ、ちょっかい出して来て嫌なんだよね…」


「ちょっかいのレベルじゃねぇだろ」


「本当に酷いよ。私達を日本人だと思っていないんだろうね」


 δは涙を浮かべていた。



その後、οがδの事をγの担任に告げたのがきっかけとなり、γは担任に怒られ、両親と共に校長室に呼ばれた。


「うちの子に限って悪い事?」


「さぁな外国人の子を突き飛ばしたらしいぞ」


 βとθはなぜか戸惑っていた。そう、γは両親や学校の話を殆どしない。


 校長先生は俺にこんな事を言った。


「佐藤さん、同じクラスのザクラムさんを蹴ったのは本当ですね?」


 γは足を骨折しているδの方を見ると、「はい」と答えるしかなかった。


「佐藤さん、同じクラスの仲間なのに階段から突き落とすのは駄目だよ」


 担任の先生も強くγを注意していた。


「はい」


 俺ははいと答えると、δの家族が俺達を睨んでいた。


「ごめんなさい」


 γはδに謝るしかなかった。本当は謝りたくなかった。δの家族が校長室を出た後、俺達は担任や校長先生に注意を受けた後、校長室を出た。



 校長室を出た後、βがこんな事を言った。


「まぁ確かにγがやった事は悪いけど、あの家族も感じ悪いよな」


「ねぇーとっとと帰化すればいいのに」


 βやθもγがやった事は悪いと思ったが、δの家族にも問題ありきだろうと思っていた。なぜならδの家族は日本に不法滞在しているからだ。しかし、実際は難民申請してもなかなか通らないだけである。


3人は学校から家に帰って行った。



 

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