第4話 佐藤ω(8) 小学2年生
佐藤ωは同じく川口市の小学校に通う小学校2年生の女子児童だ。彼女は生まれる前の記憶を知っている。
前世は女性では無く、男性だったので、服装も男女関係ないものにしていた。両親には変だと思われていた。
最近、ωのクラスには転入生が来ていた。板橋区にある朝鮮学校から来た
ほかのクラスメイトはなぜか彼女を避けていたが、ωは気にせず彼女に声をかけた。
「ωちゃんって言うの?」
ωが声をかけると、韓ωは「うん」と答えた。
「へぇー同じ名前だね。学校帰りに荒川に行こうよ」
ωが韓ωに声をかけると、韓ωは「うん!」とニッコリ笑った。
学校帰り、2人は荒川の河川敷に行った。そこは東京都と埼玉県の県境であり、川の向こうには東京都北区赤羽や板橋区などが見える。そこではジョギングをしたり、犬の散歩をしたりする人がいた。
「ねぇ、どうして私に声かけてくれたの」
韓ωは朝鮮学校から転入して来たばかりの自分に対してどうして声を掛けてくれたのか不思議だった。
「だって私と同じ名前だし、それに・・みんな誰も声かけてくれなかったもん」
韓ωはやや悲しいそうな表情をしていた。恐らく彼女のクラスメイトも朝鮮学校から来た韓ωに強い偏見を持っていたのだろう。
「やっぱり・・朝鮮学校から来たからかな?」
そんなクラスメイトの雰囲気を汲み取っていた韓ωは体育座りをして下を向いた。
「大丈夫だよ!ωちゃん」
ωは彼女を励ますと、韓ωは「うん」と言って河川敷を眺めていた。
ωが韓ωと別れて家に帰ると、絵を描いていていた。しばらくすると、βら3人が帰って来た。
「また変な絵を描いているのか?」
βはωの行動にうんざりしていた。と言うのもωは家族の中ではおかしな行動をしていたからだ。
ωは幼い頃から絵が上手かったが、その絵は少々変わっていた。
昔の東京帝国大学の建物だったり、沖縄戦前の那覇の街並みをクレヨンで描いていた。
6歳になると、ωは「沖縄に行きたい」と言ってθの実家がある沖縄に行き、パレット久茂地にある那覇市歴史博物館や新都心にある沖縄県立博物館へ行った。昔の那覇の写真を見せると、ωは写真を見つめていた。
その中でもオメガが気になっていた写真は当時県庁の敷地内にあった県立図書館の写真だった。ωはその写真を見て喜んでいた。
そんなωを両親や兄のγは不気味がっていたが、オメガが小学校へ上がるとそれは無くなっていた。
しかし、今のωを見ているとまたおかしな事を言い出さないか心配だった。
「何書いているの?」
θがωに聞くと
「図書館司書」
ωが描いた図書館司書は袴姿の女性だった。また変な事を言うのではないかとβやθは心配していた。
「図書館司書?その人は誰?」
「好きな人」
βやθ、γもωの困惑していたが、ωはさらに絵を描き続けた。
「これ私」
ωが両親に見せた絵は色白ですらっとした細身の体型に髭眼鏡が特徴の男だった。γは「これおっさんじゃん?」とオメガが描いた絵を取った。
「違う私」
「変な事を言うなよ」
「私、前世の記憶があるの」
ωが衝撃的な事を言うと、βやθ、γは驚いた。
「前世の記憶?それって本当か?」
βを始めとする3人にはにわかに信じ難いものだった。
「本当だよ。みんなに言っても誰も信じてくれないから言わなかっただけ。私の前世は沖縄の人で図書館の館長だった」
図書館の館長?θは前に沖縄旅行の際、県立博物館の常設展で見た写真の人か?確かにあれは沖縄の人と言うより、その辺にもいそうな人だった。
「そうなのね。じゃあ前世は男の人?」
「うん」
ωは頷くとあと1つ、絵を描いた紙を見せた。
こちらも袴姿の女性だが、こちらはマーガレットの髪型に海老茶色の袴を着た女学生の絵だった。
「これはね私のファンだった人。この人は桜崎学園の出身」
ωが絵を家族に見せると、「お兄ちゃん、中学校の説明会に行くんでしょ?桜崎学園の説明会に行ってよ」
「え…?」
θは困惑した。なぜなら、θがγに進学させたい学校は川口駅から乗り換えなしで行く事ができるさいたま市にある公立の中高一貫校だからだ。櫻崎学園は都内に住む兄夫婦の子供が通っている学校みたいだが、大学進学に特化させた学校と言うより、専門分野が強く、個性を大事にする私服の学校らしい。
兄夫婦は姪っ子の櫻崎学園の進学にはなぜか反対していたらしく、名門の女子御三家に進学させようとしていたが、姪っ子は兄夫婦の反対を押し切り、櫻崎学園に進学したと言う。ついでに彼女の弟である甥っ子も男子御三家ではなく、姪っ子と同じ学校に進学した。
「櫻崎学園って確か千代田区にある学校だよね?」
「うん」
「いいけど、お兄ちゃんが通う学校の滑り止めね」
とシータは答えた。
「わかった。後、説明会に私も行く」
ωも櫻崎学園の説明会に行きたいと言うと、θは「はいはい」と苦笑いをした。
その夜、θは櫻崎学園の説明会をスマホで調べた。なんと説明会は今週の土曜日に行われており、誰でも来てもいいという。
「ねぇ土曜日に櫻崎学園って言う千代田区にある学校の説明会があるんだけど、一緒に行かない?」
θはソファーでテレビを見ているβに尋ねると、βは「うん。いいよ」と答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます