第6話 櫻崎学園の説明会②


「校長の挨拶はこれで以上となります。続いては櫻崎学園の映像をプロジェクターで流したいと思います。」


 女性はパソコンを使ってプロジェクターを流した。

 プロジェクターの映像には櫻崎学園の創設から現在までの映像が流れていた。プロジェクターの映像が流れた後、女性は事務員の真栄田世奈せなだと名乗った。

 その時、ωは苗字に反応したのか彼女を見てとても喜んでいた。


「真栄田君だ!」


 ωが笑顔で名前を言うと、θが「しー」と言って彼女を静かにさせようとしていた。


「櫻崎学園では修学旅行がありますが、中等部は北海道、高等部は沖縄に行きます」


 世奈がプロジェクションマッピングで解説しながら話すと、修学旅行の映像が流れた。映像には平和の礎を始めとする戦跡や首里城、博物館や与那原駅庁舎に行ったり、アイヌ民族博物館に見学したり、スキーをしたりする様子が写っていた。


 γは(北海道と沖縄はお父さんとお母さんの地元だから楽しくなさそうだな・・)と思っていた。


 説明会が終わった後、γがβと共に校内見学に行っている間、θはωと共に校内の事務員である真栄田世奈に会った。

 オメガは世奈を見て「真栄田君、久しぶだね」と世奈に挨拶をした。

 しかし、世奈はそんなオメガを見ても「?」であった。


「私の事覚えていないの?あなたは県立図書館の司書だったじゃん」


 オメガが世奈に言うと、世奈はさらに困惑した。


「あのお姉さんの苗字は真栄田だけど、あなたの知っている人ではないよ」


「え?でもお姉さん似てるよ」


 世奈は子供の空想か何かかと思って苦笑いしていた。


「んー多分その人、親戚かもね」


「本当!」


 オメガが目を輝かせていると、「変な事言わないの。お父さんやお兄ちゃん達の所へ行くよ」とシータに手を引っ張られてβやγがいる場所へ行った。


 一方、櫻崎学園の講堂を出たβとγは裏庭を通り校舎の中へと入っていった。校舎はビルの新校舎とモダンな旧校舎で分かれており、新校舎は主に大学生が利用し、旧校舎は中高生が利用していた。窓ガラスには一部ステンドグラスがあったが、廊下にはアメリカのハイスクールのようなロッカーが並べられていたり、私服の生徒が歩いていたりと普通の学校とは違う雰囲気に2人は違和感を感じていた。


「アールデコ調の校舎だと言うのに生徒は私服だからなんかアンバランスだな・・」


 校舎に反して生徒達の恰好は比較的自由であり、中には派手な色に髪を染めたり、耳や鼻にピアスをし、タトゥーを入れる生徒もいた。


(カオスだな・・俺や姉貴が通っていた学校も私服の学校だったけど、流石にタトゥーまでする生徒はいなかったな・・)


 βは地元北海道の学校にも私服で校則の緩い所はあったが、櫻崎学園のようにタトゥーまで許す学校は無かった。


 すると、γが何かに気づいたのかβに声をかけた。


「ねぇお父さん、あれ何?」


 γが空き教室の方に指を指すと、なんとそこには同性のカップルがキスをしていたのだ。


 βは嘲笑うかのようにカップル達を見ると、γが「お父さん、もしかしてあれBL?」と聞いてきた。


「そうだよ」


「ふーんじゃあ『やらないか』とか言うのかな?」


 γがネットミームのネタを言うと、「随分、昔のネタを知っているな」βはカップル達から目を逸らし、γを見ると、「だってYouTubeで流れているから」と答えた。


「そっかー昔、ニタニタ動画で流れていてダンスとか覚えて歌っていたから懐かしいな…」


 βはそう呟くと、γと廊下を歩いた。


 βは廊下を歩いてもあまりいい気持ちがしなかった。というのも廊下を歩いても朝鮮学校のようなチマチョゴリを着る女子生徒やイスラム教のベジャブを被った女子生徒や明らかにアフリカ系とされる生徒もおり、βから見れば学校と言うよりインターナショナルスクールのように見えた。


「なんだここ、リベラル・ポリコレ学園か?」


 βは廊下を歩く生徒達を見て苦笑いをしていた。すると、向こうから「おーい!β!」とθの声が聞こえた。


 βは振り向くと、そこにはθがωを連れて駆けつけていた。


「どうしたんだよ」


 βが声を掛けると、θはパンフレットをβやγに見せた。


「櫻崎学園の経路図が書かれたパンフレットを持って来たんだけど、新校舎の1階に中高生も大学生も共用で食事をする学食があるみたい。お兄ちゃん達から聞いた話だと安くて美味しいし、学外の人も食事をする事ができるって。せっかくここに来たからお昼はこっちで食べない?」


 θの誘いにβが「うん」と答えると、γが「え?お母さん、中学校なのに給食じゃないの?やったー好きなもの食べ放題だ!」γは大喜びではしゃいでいた。


「無いみたいね・・」


 θが苦笑いしながら呟くと、一家は学食がある新校舎へと向かった。




 




 

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