第13話 θ(43)の再就職


 θはロボットに言われた通り再就職の為に通信会社「Verse」に就職するため、ホームページで履歴書を書いたり、証明写真を取ったりと就職に向けての準備をしていた。一方、βはそれがあまり気に入らなかったようだ。


 βが夕食もお風呂も終え、ソファーでくつろぎながらテレビを付けた。テレビはロシアのウクライナ侵攻と言った戦争ばかりの暗いニュースばかりだった。


 そんな時、βはあるテレビドラマの予告見かけた。テレビドラマの画面には広大な砂漠を歩く主人公が映し出された。


「なんか面白そうだな」


 βはそのドラマを録画した。


「ねぇなんか録画した?」


 θはβに聞いた。


「うん」


 と答えると、βは番組表をテレビに戻すと、こんなニュースが放送されていた。

 福島原発事故の海洋放出に関するニュースであり、政府は海洋放出には問題無いと主張していた。それよりも中国による誹謗中傷や嫌がらせ行為が酷いという報道が流れていた。


 βはそれを見て「自分の国にも原発があるのに日本ばかり批判するなよ」と呟いていた。


「そうだね・・・・嫌がらせにあっている人が可哀そう」


 θもニュースを見て原発事故の元凶が日本政府である事をわかっているようでわからなかったのだ。


 これに関しては中国や韓国のみならず、インドネシアやイギリス、マーシャル諸島でも批判されていたが、佐藤夫妻はそれに気づく事は無かった。


 佐藤夫妻の会話を近くで聞いていたγは黙っていたが、なんとなく中国の事を話しているのはわかっていた。γは両親に「おやすみ」と言って自分の部屋に戻って行った。自分の部屋に戻ると、γはシステムベットの机に座り、キッズスマホを開いた。


 スマホにはγが4年生の頃まで隣に住んでいた友人にショートメールのメッセージを送った。


‘‘坂下!元気にすごしているか?上海の学校はどんな感じ‘‘


 親の仕事の事情で上海に行った友人に連絡すると、友人からはこんな返信が返って来た。


‘‘元気だよ!俺が通っている日本人学校は大丈夫だけど、近くの日本人学校は中国人が来て酷いことになっているらしいよ!‘‘


 友人の返信を見てγは「あーやっぱりそうなんだ」と思い、‘‘坂下、中国人に注意しろよ‘‘と返信すると、友人は‘‘了解‘‘という返信を送った。


 友人に返信を送ったγは‘‘そういえばさ、俺、中学受験するんだ。合格したらスマホ買うからLINEのアカウント教えてくれよな‘‘と友人にメッセージを送った。


 γはシステムベットの階段を上り、ベットに入ると、(早くスマホが欲しいな)と思いながら寝るのであった。



 次の日、履歴書を書いたθはママチャリに乗ってパート先のスーパーに通いながら履歴書をポストに入れた。


「採用されますように」


 θは採用されるように祈った。


 この事をパート仲間の中村や金本に話すと


「凄いねぇ」


「まぁ頑張ってねぇ」


 と言われた。これを梢に話すと、「Verseねぇ、佐藤さんには頑張って欲しいけど、あそこの試験はハードル高いよ」と言われた。


「え?どうしてですか」


 θは阿良々木店長に訊ねた。


「Verseは試験もハイレベルだけど、面接も難しいよ」


「え・・どんな感じですか?」


「うーん強いて言うなら質問が多い・・結構いろんな事聞かれるよ」


「そうですか・・」


「あっ、佐藤さん。最近、王さんに冷たいけど、何かあったの?」


 阿良々木店長はθが最近、同僚の王に冷たい事を察していた。例えば王がθに挨拶しても無視をしていたりなどだ。


「いえ、何も・・喧嘩とかそういうのは無いですよ」


 確かにθは王と喧嘩とかそういうトラブルを起こしたことは無い。だだθは福島原発事故の海洋放出に関して王が反対の立場を取っていたので、試しにまかないとして余ったマグロ丼をあげたりしていたが・・


「そう・・王さんが最近、佐藤さんに嫌がらせをされているんじゃないかって言うようになったんです」


「えーそうですか・・全然、そんな事は無いのですが」


 そうθは言うが、実際には王が中国人であることや川口駅で反原発の運動に行っている事に嫌気が察しっていたので、差別的な行為をしているだけだったのだ。



 1週間後、パートが休みのθは自転車に乗って買い物に行こうとすると、電話が鳴った。


「はい、もしもし佐藤です」


「佐藤さんですか、書類審査が通りました。〇月〇日に中途採用の試験があります。試験会場は本社がある東京都千代田区丸の内のオフィスビルです」


「え!中途採用に合格したんですか!ありがとうございます!中途試験は何時から何時まででしょうか?」


「13:00~14:00まで。試験にはスーツを着用してください」


 と電話の人に言われると、θは「はい」と言って電話を切った。やった!書類審査が通ったんだ!と喜んで自転車に乗って買い物に行った。





 

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