第1話 佐藤β(47)会社員
「ドブランゴ」はβが前にいた「龍の穴」やその前にいた「便通」よりずっと待遇が良く、リモートワークか通勤を選ぶ事もできる。2020年のコロナの時はリモートワークをしていた。
コロナが終わると、βは職場に出勤するようになった。(と言ってもリモートワークが多いが)βは会社に出勤すると、そこには新入社員が来ており、上司が新入社員の紹介をしていた。
「今日からうちの会社に入る
「大学を卒業し、今年からこの会社に入社する事になりました。橘です。よろしくお願いします!」
彼女はβ好みの地味で眼鏡をかけた冴えない人だった。俺は仕事が終わると、すぐζに声を掛けた。「サイゼリヤに行かないか?」と。ζはは嫌がる事もなく「うん」と答えた。
βとζは職場から東京メトロの銀座線に乗り、銀座にある有楽町駅近くのサイゼリヤに行った。店内に入ると、βはζと一緒の席に座った。座ってメニューを見ながらβはζに話しかけた。
「よかったよ君がサイゼリヤでも嫌がらない子で。普通の料理店はコストがかかるからね。僕はねコストがかからない場所がいいんだよ」
「はあ…………」
彼女はなぜか浮かない顔をしていた。
「そう。こっちの方が安いし割り勘できるからさ。僕は独身時代からここの店に通っているんだ。君はサイゼリヤに行くのは初めてだろ?」
「ええ。私はサイゼリヤない県の出身なので…」
「サイゼリヤが無い県なんだね。出身はどこだい?」
「大分です」
「大分か。そこは確か日テレも無いところだよね」
「はい」
「あー後さ僕こう見えて47なんだけど、結構、若作りしているからさ30代ぐらいに見えるんだよ」
「そうなんですね…」
なぜか彼女は「へへへ」と笑っていた。恥ずかしがり屋さんなのかな?とβは思った。
「そういえばζさんってこっちに入って来たばかりなんだよね?どう?仕事は慣れた?」
βがζに仕事について聞いた。
「あ・・いえ・・まだまだ慣れません・・でも、何かわからない事があったら教えてくれませんか?その・・ニタニタ動画の運営のやり方とか」
ζがβに仕事について聞くと、βは「うん。いいよ」と答えた。
「でも、君は新人だからニタニタ動画の運営まではしないと思うよ・・でも、何か企画を作らないといけないかもね・・」
「そうですか・・」
「うん。その時は俺らの力を借りずに自力じゃないと、いけないけど、それできる?」
βの質問にζは「はい・・できます」と下を向きながら答えると、店員を呼び、マルゲリータを注文した。βも「え、もう注文しちゃうの?」って表情をしながらいつもそこで注文しているミラノ風ドリアを注文した。
「ζちゃん、すぐに注文するって変わっているねぇ・・もしかしてアスペ?」
「・・いえ、私は発達障害ではありません」
ζはβの「アスペ」という言葉に不快な表情を抱きながらも、眉間にしわを寄せて応えた。
「そんな難しい顔しなくてもいいから、良かった。アスペ、いや発達障害だったら、俺達の仕事が増えて大変なんだよ。あいつら仕事の日程とか忘れるし、指示通りしか動かないから厄介なんだよ。人事部はなるべく採用しないにしているみたいだしな・・」
βが発達障害の人に対する差別的な言動をべらべら話していると、ζは無表情だが、怒りを露わにしていた。というのもζには発達障害の姉がおり、姉はそのせいでまともに定職が就けず、転職を繰り返していた。
「それは・・間違っていると思います・・」
ζは重い口を開くと、βを睨んでいた。
「何、怒っているんだ?別に間違っている事は」
「いえ、間違っています。発達障害の人が仕事に負担がかかるから採用しないのではなく、むしろ彼らを採用する方が社会の発展につながると思っています!」
ζが意見すると、「ご注文のマルゲリータとミラノ風ドリアです」と店員がマルゲリータとドリアを置いた。
「そう怒らないでよ・・じゃあ食事が終わったら割り勘で。ねぇその後も僕とどこか行かない?」
βはドリア食べながらζを誘った。βはζと2人っきりに慣れる場所が良かった。
「支払いの方は私も払いますが、その後の事に関しては結構です。食事が終われば帰らせていただきます」
ζは怒りながらマルゲリータを食べ、βにお金を渡すと、怒って店から去って行った。βは変な顔をしながら会計を済ませて店を出た後、有楽町から京浜東北線の大宮行の電車に乗った。
電車の中でβはSNSを見ていた。
「食事に誘った同僚の女の人がその後の誘いに断ったんだが、そんなに俺の事気に入らなかったのかね?」
スマホで投稿すると、その投稿はなぜかバズってコメントまで来た。
おお!いいね!俺は称賛するコメントには返信し、批判するコメントにはブロックした。
川口駅に辿り着くと、そこから自宅に向かって歩いて行った。
自宅に戻ると、そこにはθが椅子に座ってスマホを弄っていた。
「おかえり」
「ああ、ただいま」
βはθを見ると、ζより可愛かったので彼女を愛そうと思った。
次の日、職場に来るとζはβと口を聞かなくなった。
すると、堀江部長がβに「佐藤君、橘さんにちょっかい出しすぎたんじゃないの?」とニヤニヤしながらβの方を置いた。
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