2023年
プロローグ
東京郊外にある埼玉県川口市の閑静な住宅街に「佐藤」と言う家族が住んでいた。
家族構成は40代の会社員の夫とパートの妻、小学生の子供が2人と言う典型的な4人家族だ。
佐藤一家の本名は別にあるが、作中では敢えて会社員の夫を「
一家は元から川口市に住んでいたというわけではなく、後から引っ越してきた人達だ。夫婦の出身地は北海道と沖縄であるが、前者は1867年以降に入植した開拓者の子孫であり、後者は転勤族なのでその地に元から住んでいたアイヌと琉球をルーツに持たない「和人」であった。
βは北海道の大学を卒業後、東京の大手通信会社「
そんな仕事の疲れから千代田区にあるカフェー「モオ・モジョ」に立ち寄るようになった。なぜ、喫茶店ではなく、カフェーなのか?というとこの店を経営しているマスターによると、この店は関東大震災以後の日本に流行した法律スレスレの「カフェー」だから敢えてその名称らしい。
また、その店は所謂「恋愛弱者」を救う店らしく、ずっと恋愛をした事が無い彼らに「救済」という奇妙なメニューを利用して出会いを求めるそうだ。
βも例外では無く、「救済」を利用して当時、そこでアルバイトをしていた大学生の
当時2人は同棲生活を始めたかったようだが、定職に就かなければ家賃が高い都心では生活するのも厳しいという事で定職に就くまで同棲をしなかった。
2004年にθが某少年漫画で有名な「集雄社」に就職し、翌年にβが秋葉原にある龍の穴に転職すると、2人は同棲を始める。これは法律婚を前提としたものでは無く、あくまでも事実婚であり、子供を作らない前提であった。
2009年にθは「集雄社」から「
2011年に東日本大震災が発生すると、将来への不安から法律婚をした。
子供を作らないつもりでいた2人だったが、家族や周囲に言われて、翌年には第1子の
θは退職後、当時住んでいた自宅付近のコンビニでアルバイトをしていた。2015年に第2子である
しばらくは東京都内で住んでいた一家であったが、子供2人も成長し、γが保育園に入る頃、家賃が高い都内ではなく、郊外に暮らしたいと考えた。そこでθの叔母がいるさいたま市からも近く、βの会社にも乗り換えなしで通勤ができる埼玉県川口市に引越し、そこで暮らした。
2020年のコロナの時はβとγがリモートとなり、外に出る事ができず、家の中の冷蔵庫が冷凍食品だらけになったが、それでも一家はコロナを乗り越えたと思い、それを誇りに思っている。
そして2023年の現在、この国のマジョリティーである佐藤一家はいつもと変わらぬ日常を送ろうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます