今まで我慢してきたんだから
「……璃花、ごめんね。脱いで」
……私は、催眠術に掛かったってことになってる。
もしも、今ここでいつもみたいに、珠鈴の言う通りにして、服を脱いだら、今の珠鈴の様子的に、多分、最後までされちゃうと思う。
「やだ」
だから、私はそう言った。
「えっ?」
すると、珠鈴はこんなことは全く予想していなかったみたいで、ちょっと間抜けな声を出していた。
「り、璃花? え? さ、催眠術、かかって、ない? も、もう一回、これ見て、璃花」
今までのことから、珠鈴は催眠術のことを疑うようなことはせず、慌てたようにそう言って、もう一度私にスマホの画面を見せてきた。
「……り、璃花、ふ、服、脱いで」
そして、今度は最初の感じとは違って、恐る恐る、と言った感じに珠鈴はそう言ってきた。
……可愛い。
「嫌だよ。珠鈴」
可愛いとは思うけど、そんな珠鈴の言葉に頷くわけにはいかないから、私はもう一度、そう言った。
「えっ、な、え?」
困惑している珠鈴に私は黙って近づいて、ゆっくりと珠鈴の体を抱きしめた。
そして、私はちゃんと珠鈴に目を合わせた。
まだ珠鈴の綺麗な瞳には困惑の様子が伺える。
「珠鈴」
「ーーッ」
私が珠鈴の名前を呼ぶと、珠鈴の肩がビクッ、と震えた。
今までのこと、怒られると思ってるのかな。
大丈夫だよ。元から、催眠術なんて存在しないんだから、あれは全部私の意思だったんだからね。
心の中でそう思いつつも、私はまだ困惑している珠鈴の手からスマホを取った。
「珠鈴、これ見て」
そして、珠鈴のスマホを少し操作してから、私はいつも珠鈴が見せてくる催眠術の画面を珠鈴に向かって見せつけた。
「えっ、あっ」
すると、珠鈴は反射的に目をギュッ、と閉じて、その画面を見ないようにしてきた。
……私は抵抗したことないのに。……いや、別にいいけどさ。
「珠鈴、閉じちゃダメ。目、開けて?」
私がそう言うと、珠鈴はゆっくりと素直に目を開けてくれた。
「り、璃花、ごめん、なさい」
そう言いながら。
「……」
「珠鈴、どう?」
「……え? あ、れ、な、なんで……?」
催眠術の画面を見ているのに、催眠術に掛からない。
その事実に珠鈴はただでさえ困惑していたのに、更に困惑しだした。
「珠鈴、好きだよ」
「え?」
そんな珠鈴の様子は無視して、私はそう言ってから、珠鈴にキスをした。
いつも催眠術にかけてきて、珠鈴だってしてきてたんだから、別にいいよね。
「り、璃花……な、なんで」
「なんでって、言った通りだよ? 珠鈴の事が好きなの。答えは?」
大丈夫。
珠鈴は私のことが好きなんだから、頷いてくれるはず。
「わ、私も好き! す、好きなんだけど! そ、そうじゃなくて、な、なんで、催眠術に掛かってない、の? わ、私も掛からなかったし……」
……良かった。
結果はほぼ分かってたことなんだけど、改めて、珠鈴に好きって言って貰えたことに安堵しつつ、私は困惑している珠鈴にもう一度キスをした。
なんか、珠鈴が催眠術の件で困惑してるけど、そんな様子も可愛いし、今までいっぱい抵抗できない状況で色々されて、色々我慢してきたんだから、別に大丈夫だもんね。
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