やだ
珠鈴に誕生日プレゼントを渡して、ケーキも食べ終えた。
私と珠鈴は今、気まずい……ことは無いんだけど、無言の時間が続いている。
私が早く告白をしたらいいだけの話なんだけど、出来ない。
覚悟なんてとっくの前に決めて、心の準備もしてきたはずなのに、私の口は開かなかった。
……ダメだ。
今、ここで告白できないと、私は一生告白なんて出来ないし、一生後悔する。
「……ふぅ」
そう思った私は、小さく深呼吸をして、今度こそ、珠鈴に私の気持ちを伝えようと口を開いた。
「みーー」
「り、璃花!」
それと同時に、珠鈴も口を開いて、私の名前を呼んできた。
……残念なことに、珠鈴には私が何かを言おうとしていたことは伝わっていないみたいだった。……タイミングが悪いよ、珠鈴。……せっかく、今なら、絶対言えたのに。
「……何?」
内心でそんな不満を口にしつつも、私がヘタレなのが悪いんだし、そんな不満は表情には出さずに、私はそう聞いた。
「う、うん。……そ、そろそろ、璃花が言ってたご褒美、欲しいなって……思い、ました」
すると、珠鈴は耳の先まで顔を真っ赤にしながら、そう言ってきた。
……そんな恥ずかしい思いをしてまで、私のご褒美、欲しいんだ。……えっちなの、だよね。……あの時、えっちなのでもいいって言ったし。
「ま、待って。後、少しだけ待って」
珠鈴にご褒美をあげるのは全然いい。それがえっちなのでも、私からいいって言ったんだし、そもそも好きだし、問題があるはずがない。
でも、それは告白をしてからだ。
正式に付き合ってから、そういうことはしたい。……そういうことを今日するのかは分かんないんだけどさ。
「……なんで?」
「え?」
「私、いっぱい我慢したよ? もう、我慢できないよ。……璃花、私のこと、からかってたの?」
そう思いつつも、もう一度覚悟を決めようとしたところで、珠鈴は泣きそうな表情をしながら、そう言ってきた。
待って。なんで、そうなるの? 違うに決まってる。というか、もう珠鈴も私の気持ちなんて察してるでしょ?
「……最後。最後、だから。……最後の一回、だから、これだけ、許して、璃花。後で、絶対正直に言って、謝る、から」
「み、珠鈴、待って……」
私の言葉は届かずに、珠鈴は呟くようにそう言って、私が止める間もなく、私にいつもの催眠術の画面を見せてきた。
「……璃花、ごめんね。脱いで」
……私は、催眠術に掛かったってことになってる。
もしも、今ここでいつもみたいに、珠鈴の言う通りにして、服を脱いだら、今の珠鈴の様子的に、多分、最後までされちゃうと思う。
「やだ」
だから、私はそう言った。
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