珠鈴には言えない

 珠鈴と一緒に教室に入った私は、真っ先に自分の席に座った。

 そしてそのまま、色々な自分の感情を誤魔化すために、さっき桜井に借りた本を読みたかったけど、もう時間もあんまりないし、何より、珠鈴の前で読むのはなんとなく、ダメそうな気がしたから、やめておいた。

 珠鈴と話をしてもいいんだけど、今は私の気持ちがちょっとやばいから、適当に机にうつ伏せになりながら、時間が進むのを待っていると、直ぐにチャイムが鳴って、授業が始まった。





 授業が終わる頃には、私の珠鈴に対するさっきまでの気持ちも少しは冷めていて、そのまますぐ放課後になった。

 ちなみに、桜井はあの後すぐ学校に戻ってきてたみたいで、遅刻することなく、授業を受けていた。


「璃花、一緒に帰ろ」


 そして、放課後になった瞬間、珠鈴が私の方に振り向きながら、そう聞いてきた。

 いつもだったら、適当に頷いて一緒に帰るんだけど、今日は珠鈴の誕生日プレゼントを買いに行かなきゃだし、断らないと。


「無理」

「…………なんで?」

「……用事、かな」


 やばい。言い訳、考えてなかった。

 いつもだったら二つ返事で頷くんだから、当然理由くらい聞いてくるよね。

 

 

「なんの用事?」

「……秘密」


 流石に、珠鈴の誕生日プレゼントを買いに行くから、なんて言えるわけないから、そう言って私は誤魔化した。


「……なんで? 私にも、言えないようなことなの?」


 ……どっちかって言うと、珠鈴にも言えないと言うか、珠鈴には、かな。


「いや、珠鈴には言えないこと、かな」


 そう思って、私はそう言った。

 そして言ってから気がついた。

 もう少しうまい言い方があったかもしれない、と。


「は? 私に以外は言えるってこと? なんで? なんで?」

「み、珠鈴? 一旦、教室出よっか」


 まだ放課後になったばかりで人も残ってるし、このままじゃクラスの人達の視線が集まると思って、そう言って、珠鈴の手を引っ張りながら教室を出た。

 

 

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