珠鈴だって…

「ただいま」


 なんとなく、家に帰ってきた私は、そう言ってみた。

 普段なら、絶対言わない。そもそも、独り言自体、数える程しか言ったことなんてないと思う。

 はぁ、珠鈴、帰っちゃったな。……もう少し、一緒にいたかったけど、仕方ない。


 食器でも洗お。

 暇だし、特にやることもないし。

 

 ……珠鈴の使ってた食器だ。……いや、だからなんだって話だけど。

 ……変なこと、考えてないで、さっさと洗おう。

 私は首を少し横に振って、洗い物を続けた。


 よし、終わった。

 次は洗濯物を洗おうかな。……これは洗濯機のスイッチを入れるだけだし。

 さっさと洗って、明日には、珠鈴の服とかを返さないと。

 そう思って、私は洗濯機を回しにきたんだけど、洗濯機の前に立って、思った。

 ……この中、つい昨日まで、珠鈴が履いてた下着、とかが入ってるん、だよね。

 珠鈴、だって、私の下着で、そういうこと、してたことがあったんだから、私も、少しくらい、いい、よね。

 

 い、いや、だめ。だめに、決まってる。

 そんな言い訳を心の中で呟きながら、洗濯機の中から珠鈴の下着を取り出しそうになったんだけど、なんとか、自制した。

 さっさと、洗っちゃおう。

 一度、洗濯機を回せば、もう取り出せないし、変なことも考えずに済む。


 そう考えている間も頭の片隅では、珠鈴は私のを嗅いでたりしたんだから、と思って、洗濯機の中から珠鈴の下着を取り出しそうになっちゃう。

 

 いつもは、こんなんじゃないのに、私は、頭の中が珠鈴でいっぱいになってた。

 昨日、我慢するつもりだったのに、珠鈴に誘惑されて、あんなことをしたからかもしれない。

 これで、付き合ってるんだったら、少しはマシだったかもしれない。……でも、まだ付き合ってもないんだから、こんな物が目の前にあったら我慢出来なくなるのも、仕方ないと思うんだよ。


 そんな言い訳を自分にしながら、今度こそ、私は自分を止められなくて、洗濯機の中から、珠鈴が着ていた服と、下着を取り出した。

 そしてそのまま、自分の顔に珠鈴の下着を押し付けた。

 ……最低。……もしも、珠鈴が私の下着でそういうことをしていたのを知らなかったら、そう思って、一生、自己嫌悪に囚われてたかもしれない。

 でも、珠鈴だって、してたんだから、大丈夫、だよね。

 ……自分で言うのもなんだけど、変態同士、お似合い、だと思うし。

 

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