勝手に思ったらいい

「んっ」


 やめてって言えば、珠鈴はやめてくれると思うから。そう、思ったから、見間違いだとは思うけど、あんなのが見えても、一緒に寝てるんだ。

 ……なのに、言えない。……催眠術に掛かってるってことになってるんだから、絶対、言えない。やめてなんて、言えない。

 でも、言わなかったら、このまま、最後まで、されちゃうかもしれない。


「み、すずはっ、まだ、寝ないのっ?」


 そんな思考がぐるぐると頭の中で回ってるけど、私はなんとか、そう言った。

 これなら、不自然じゃないと思うし、改めて、私はもう寝たいっていう意思表示になると思うし。


「……うん。まだ、こうしてたい」

「ぁっんっ」


 そう言って、珠鈴は私の服の中に手を入れてきて、直接、私の胸の固くなってきてる部分を触ってきた。

 こんな状況で、どれだけ目を閉じても、眠れるわけがない。

 それどころか、目を閉じれば閉じるほど、胸の方を意識しちゃって、気持ちよくなってくる。


「……璃花、こっち、向いて」

「や、やだ」


 今、珠鈴の方なんて向いたら、絶対、恥ずかしい顔、見られちゃう。

 暗闇だし、見えない可能性もあるけど、見られる可能性があるっていうのが、嫌なんだよ。

 だから、そう言ったのに、珠鈴は何を勘違いしたのか、私の胸の固くなってきてる部分をさっきより強く摘んできた。


「んっぁっ、みっぁ」


 もう、だめ。

 我慢、出来ない。

 頭がふわふわして、もう、珠鈴のことしか考えられなくなった私は、珠鈴の方を向いて、私からするのは二回目のキスをした。

 これは、もう、言い訳なんて出来ない。


「り、璃花!? そ、そう、だよね。寝るん、だもんね。……だから、さっき掛けた催眠術が残ってて、口の中、綺麗にしたかったってこと、だよね」


 そう、思ってたのに、珠鈴は呟くようにそう言って、勝手に納得してしまった。

 ……私としては、珠鈴のことしか考えられなくなって、したことではあるけど、もう、我慢できなくて、気持ちを伝えようと思ってたのに。

 ……でも、珠鈴がそう思うのなら、勝手に思ったらいい。……いつかはちゃんと伝えるけど、今日は、珠鈴が勘違いしてるのが悪いんだから、もう、知らない。


 そう思って、私はもう一度、珠鈴にキスをして、そのまま、舌を入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る