なんか、嫌だ

「ごちそうさまです。……美味しかったよ。璃花」


 夜ご飯を食べ終わった珠鈴は、手を合わせながら、改めてそう言ってきた。


「ん、良かった」


 だから、私も素直に、そう言っておいた。

 そして、私もちょうど食べ終わっていたから、珠鈴と一緒に立ち上がって、食器をキッチンに持っていった。

 持っていく途中、妙に下の方に視線を感じたけど、下の方は、見えないからね? 

 ……いや、下の方はっていうか、上も、見えないけどさ。……珠鈴がさっきみたいに、私の胸を露出させない限り、だけど。

 催眠術に掛かってるってことになってるんだから、それは、抵抗出来ないし。

 

 そして、洗い物は後でしようと思って、食器に手をつけることなく、私は、ソファに戻ってきた。

 もちろん、珠鈴も戻ってきて、私の隣に座ってきた。

 いつも通り、私に体を密着させて。

 ……良かった。さっきのことは、もう、ほんとに気にしてないみたい。


 珠鈴がほんとに気にしてないことに満足した私は、さっきのゲームをやろうと思って、スマホを取り出したんだけど、そのゲームを開くことは無かった。

 だって、途中で思い出したから。

 さっき、なんであんなことをされたのかを。

 ……よく分からないけど、珠鈴は、私があのゲームをしてたら、えっちなこと? をしてくるから。

 ……別に、珠鈴とえっちなことをしたくない訳では無いんだけど、そういうのは、もっと、ゆっくりの方がいいと思うし。

 もう、キスもして、色々と触られてるんだから、今更かもしれないけど、それは、催眠術のせいってことになってるんだから、ほとんどノーカウントみたいなものだし。


 ……あのゲームは少なくとも、珠鈴と一緒にいる時は出来ないし、何、しようかな。

 一応、昔からしてるゲームもあるけど、今は、そういう気分じゃないしな。


 漫画でも、読もうかな。

 スマホに入ってる、漫画が読めるアプリで。

 一日で無限に読める訳では無いけど、少しだけなら、いい暇つぶしになると思うし。


 そう思いながら、何か、面白そうな漫画がないかな、と色々と探していると、珠鈴にそっくりなヒロインがいる、漫画を見つけた。

 ……これは、なんか、嫌だな。……ヒロインが珠鈴にそっくりだし、そういう意味では、読んでみたい気持ちもあるけど、ヒロインってことは、この、私じゃない、主人公と結ばれるってこと、だもんね。

 ただの漫画だし、このヒロインは、珠鈴な訳でもない。それは、分かってるんだけど、なんか、嫌だ。

 そう思った私は、その漫画を無視して、他の面白そうな漫画を探し出した。

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