もう、キスだってしてるんだし

「珠鈴、出来たよ」


 家にあるもので、適当に夜ご飯を作った私は、リビングの、テーブルに置いて、そう言った。


「璃花、あ、ありがとう。美味しそう」


 珠鈴はもう、さっきのことを気にしてる様子はないんだけど、どこか、挙動不審だった。

 ……どうしたんだろ。

 これが桜井とかだったら、正直予想できるし、特に不思議に思うこともないんだけど、珠鈴は、いつもこんな感じじゃないし、おかしいと思う。

 

「珠鈴、何か、あった?」

「えっ、う、ううん。な、なんでもないよ?」


 だから、そう聞いたんだけど、珠鈴は相変わらず、分かりやすくて、絶対になにかがあるんだとわかった。

 ……まぁ、その相変わらず分かりやすいところも、可愛いと思うし、好きだけどさ。


「そう。……じゃあ、早く食べよ」


 まぁ、さっきみたいに、気まずい空気は流れてないし、珠鈴がそういうんだったら、別にいいやと思って、私はそう言った。


「う、うん。……いただきます」

「ん、いただきます」


 そして、そう言って、私達は夜ご飯を食べ始めた。

 うん。自分で言うのもなんだけど、普通に美味しいと思う。

 良かった。失敗しないで。


「美味しいよ、璃花」

「ん、ありがと」


 自分で美味しいとは思ってたけど、珠鈴に改めてそう言って貰えると、ちゃんと自信が持てるし、嬉しいな。

 そう思いながら、私はお礼を言った。


「……璃花、食べる?」


 そうして、食べ進めていると、珠鈴がいつも、学校の食堂でしてくるように、私の方に食べ物を持ってきて、そう聞いてきた。

 ……一応、私の方にもあるけど、まぁ、いいか。

 いつも、食堂では断ってるけど、それは人目があるからだし、人目が無いところなら、別にいいと、いつも思ってたし、私は頷いて、それを食べさせてもらった。


「えっ……な、なんで?」


 すると、珠鈴がびっくりしたように、そんな声を上げて、顔を赤らめながら、そう聞いてきた。

 ……なんでって、何が?


「何が?」


 なんのことか分からなかった私は、素直にそう聞いた。


「あ……だ、だって、いつも、食べてくれない、から」

「それは、人目があるから」


 ここなら私の家だし、誰かに見られることもないし。


「い、嫌な訳じゃ、ないって、こと?」

「? まぁ、そうだね?」

「そう、なんだ……」


 よく分からないけど、私が頷くと、珠鈴は嬉しそうに、そう言っていた。

 そして、顔を赤らめながら、そのまま、特に箸を変えるようなこともせず、珠鈴も食べ進めていた。

 まぁ、もう高校生だし、間接キスくらいで、特に何かを気にすることもないよね。……私達は特に。……キスだってしてるんだし。

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