珠鈴のばか


「り、璃花、か、体洗うから、あんまり、見ないで」


 のぼせないように、足だけお風呂に浸かって、珠鈴のことを見ながら、珠鈴が頭と体を洗い終えるのを待っていると、頭を洗い終えたところで、そう言ってきた。

 ……私の時は、見るどころか、触ってきたのに、今更、そんなことを言われて、言う通りにするわけないでしょ。

 それに、珠鈴はさっきまで、タオルを取って、裸の状態で私に抱きついてきてたんだから、見られるくらい、別にいいでしょ。


「やだ」


 そう思って、一言、私はそう言った。


「ッ、うぅ、わ、分かったよ。……璃花が、そんなに見たいなら、み、見たら?」

「ん」


 そりゃ見たいよ。……だって、珠鈴のこと、大好きなんだもん。

 大好きな人のそういうのを見たいって思うのは、自然なことでしょ。……だから、珠鈴がこういう催眠術を掛けてきたことも、私は特に責めたりしない。……もし、逆の立場だったら、私も、同じような催眠術を掛けたかも、だし。


 そして、珠鈴が体を恥ずかしそうに洗うところを見ていると、さっきまで、あの綺麗な体が私の背中に密着していたんだと、改めて思って、どんどん、私の気持ちは昂っていった。

 ……早く、洗い終えないかな。

 

 そう思いながら、珠鈴のことを見ていると、いつの間にか、体を洗い終えたみたいで、珠鈴は体に付いた泡をシャワーで洗い流していた。

 ……やっと、終わった。……珠鈴、もう、私、我慢ーー


「り、璃花! わ、私、も、もう、上がるね」

「……ぇ? あ、え、み、珠鈴っ」


 やっと、珠鈴のことを押し倒せる。

 そう思ってたのに、珠鈴は顔を真っ赤にさせながら、そう言って、慌ててお風呂場を出ていった。

 ……いや、私だって、恥ずかしい気持ちを我慢して、今、ここにいたんだから、珠鈴の方が、逃げないでよ。……私の方が、100倍くらい、珠鈴より恥ずかしいことをされてるんだからさ。


 このまま、珠鈴を追いかける? 無理だ。……まさか、珠鈴が逃げるなんて思ってなくて、びっくりしたせいで、もうそこまでの熱がない。

 ……いや、まだ体は珠鈴の体を見た影響と珠鈴にいっぱい触られて、恥ずかしい目に合わされたってことで、まだ、熱いままだけど。

 

「……珠鈴のばか」


 もう、いいし。

 もう、私一人で、すませちゃおう。

 ……まだ、珠鈴がすぐそこにいて、体とか頭を拭いてる頃かもしれないけど、もう、いいし。……どうせ、恥ずかしい姿はいっぱい見られたんだし、もう、いい。

 だって、もう、抑えられないから。……少しでも、発散しておかないと、もう、無理だから。


「珠鈴っ」


 そう思って、私はタオルを取って、肩までお風呂に浸かった。そして、珠鈴の名前を呟きながら、さっきまで珠鈴に触られていた下の方に手を伸ばした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る