恥ずかしくて、おかしくなっちゃうから

「璃花、それ、やめるの?」

「うっ、んっ」


 スマホを横に置いた瞬間、珠鈴は私の胸を弄ってきながら、そう聞いてきた。

 私はそんな珠鈴の質問に、何とか頷いて、私の顔を見てきてる珠鈴から目をそらさないようにした。

 催眠術で普通のことをされてるだけってことになってるのに、今、急に目を逸らしたりしたら、おかしいから。


「み、すずっ、お風呂、まだっ、入らない、のっ?」


 そしてそのまま、そう聞いた。

 もう、なんで早くお風呂に入りたかったのかなんて、覚えてない。

 でも、これ以上、珠鈴に胸を弄られたら、ほんとに、おかしくなりそうだったから、早く、一人になれる空間に入りたい。そんな思いでそう聞いた。


「……確かに、そろそろ、いいかも」

「う、んっ、私、お風呂、沸かしてくるっ、ね」


 珠鈴のそんな言葉を聞いた瞬間、私は胸を露出したまま、ソファから立ち上がって、お風呂場に向かった。

 お風呂場に向かう途中、何度も制服のボタンを閉めて、胸を隠したいと思ったけど、そんなことをしたら、珠鈴に全部バレちゃうし、私は羞恥心を我慢して、胸を露出したままにした。


 お風呂を沸かすボタンを押した私は、ふと、鏡が目に付いた。付いてしまった。

 ……私、こんな恥ずかしい格好で、珠鈴と話してたんだ。……こんな、格好で、珠鈴に、胸も触られて……こんなの、ほんとに、私が、変態みたいじゃん。


 そう思うと、私の手は、自然と、さっきまで珠鈴が弄ってきてた部分に、伸びていった。


「璃花」


 その瞬間、後ろから、珠鈴の私を呼ぶ声が聞こえてきた。


「なっ、何?!」


 すぐに胸に伸ばしていた手を引いて、振り向きながら、私はそう聞いた。


「あ、のさ。今日は、一緒にお風呂、入らない?」


 ……良かった。見られてはなかったっぽい。

 それで、なんだっけ。……一緒にお風呂? ……え、無理だって。それは、ほんとに、無理だって。

 ただでさえ、胸を珠鈴に晒されて、羞恥心でどうにかなりそうなのに、好きな人に下まで見られるなんて、ほんとに、無理、だから。

 

「そ、れは、流石に、恥ずかしい、かな」


 胸を露出した状態で何を言ってるんだって話かもしれないけど、それは、催眠術を掛けられてて、仕方なく、なんだから、話が変わってくる。

 

「どうしても、だめ?」

「う、うん。恥ずかしい、から」


 そう言った瞬間、また、珠鈴はスマホを取り出して、催眠術の画面を見せてきた。

 待って、今、掛けようとしてる催眠術なんて、流石に想像出来る。……でも、それは、ほんとに、恥ずかしくて、おかしくなっちゃうから、やめて。


「璃花、恥ずかしいけど、私とお風呂に入るのなんて、普通のことだよね? 私に頭や体を洗ってもらうことだって、普通のことだよね?」


 そんな私の想いは虚しく、珠鈴はそう言ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る