最低でもいい

 ※珠鈴視点


 璃花とファミレスを出て別れた後、私は直ぐに家に帰って、璃花の家に泊まるための着替えを用意していた。

 カバンに服を入れて、下着を入れようとしたところで、私の手は止まってしまった。

 

 璃花の家に泊まることは別に珍しいことじゃない。

 むしろよくある事だ。私はその度に、期待に胸をふくらませて、璃花の家に行くんだから。

 ただ、当然私の期待した何かが起こるようなことはなく、普通にお喋りをしたり、ゲームで遊んだりして、別々にお風呂に入って、ご飯を食べて、別々に寝る。

 親友なんだから、当たり前だ。

 私には勇気が無かったから、そんな関係で、甘んじていた。


 でも、最近、璃花も女の子を好きになる人だと分かった。

 璃花は好きな人がいるみたいで、それが私なんじゃないかと何回も期待した。……だって、あの日、私は催眠術を使った訳でもないのに、キスをされたんだから。

 ……でも、違った。璃花がメッセージで好きって言葉を私に送信してきたことがあった。

 告白されたのだと思った。……でも、直ぐにその送信は取り消されて、私に送られたものじゃなく、私じゃない、誰かに送ろうとしていたものだと分かった。……そうじゃなかったら、送信を取り消したりなんかしないはずだから。


 もう、璃花はその璃花の好きな人に、告白していて、もしかしたら、付き合ってるのかもしれない。

 取られたくない。


 そんな思いで、私はカバンに詰めようとしていた下着を元あった場所に戻した。

 下着を忘れたってことにして、今日は、璃花と一緒に眠ろう。……その時に、体を密着させれば、私の小さめの胸でも、璃花を誘惑、出来ると思うから。

 ……その好きな人なんか忘れさせて、私のことを、好きになってもらうんだから。

 もう、付き合ってるのかもしれない。そう考えたのに、私はその人から璃花を奪おうとしてる。

 もし、もう付き合ってるんだとしたら、最低かもしれない。でも、私は、ずっと、ずっと璃花のことが好きだったんだよ。……だから、最低でもいい。もう、そんなこと、今更なんだから。


 そう思いながら、私は着替えを詰めたカバンを持って、家を出た。璃花の家に向かうために。

 

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