もういっぱいしてきてるじゃん
珠鈴と手を握り合って、たまにギュッ、ギュッ、としたりしながら、映画を見ていると、エンドロールが流れ始めた。
その瞬間、私たち以外の映画を見に来ていた人たちのガヤガヤとした声が聞こえてきた。
それに合わせて、私も珠鈴に話しかけることにした。
「珠鈴、面白かったね」
「う、うん」
私は珠鈴の顔を見てそう言ったのに、何故か、珠鈴は私の方をチラッ、と見た後、すぐに顔を逸らして、頷いてきた。
……? なんで顔を逸らすんだろ。
不思議に思いながらも、私は映画の余韻を感じながら、エンドロールをボケーッと眺めた。
そうしていると、最後に主人公達が幸せそうにしている映像が流れて、映画が完全に終わって、電気が着いた。
「珠鈴、取り敢えず、出る?」
ぼちぼちと人が減り始めたところで、私はそう言った。
「う、うん」
すると、さっきと同じように、珠鈴は頷いてきた。
私は流石に手の指を絡めながら人目があるところに行くのは恥ずかしいと思って、映画館に来る時みたいに、指を絡めるんじゃなくて、普通に手を繋ぐだけにしようとしたんだけど、珠鈴が指を絡めてきたまま、離してくれなかった。
「このまま、行こ?」
そして、珠鈴は恥ずかしそうに、そう言ってきた。
……まぁ、人目なんて、気にしなくていいか。……さっきも、気にしてなかったんだし、今更か。
「ん、分かった」
そう頷いて、珠鈴と指を絡めながら、映画館を出た。
それで、ファミレスでも寄っていこうという話になったんだけど、さっきから、珠鈴がチラチラと私の方を見てきてるような気がする。
「何?」
だから、そう聞いた。
勘違いだったら、勘違いだったで別にいいから。
「あっ、べ、別に、なんでもないよ?」
何かある反応じゃん。
……視線、少し、下かな。……目より、下。鼻? いや、唇、かな。……もしかして、さっきの映画で、私とのキスを意識してる、とか?
……いや、キスなんて、もう、いっぱいしてきてるじゃん。
なんなら、一回は私の方から、したんだし。
「じゃあ、早く行こ」
ただ、私は気が付かない振りをして、そう言った。
お腹空いたし、普通に、するとしても家でしたいから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます