どうしたんだろ
「……珠鈴?」
目が覚めた私は、視界に珠鈴の姿が入って、そう声を出した。
……そういえば、寝る前に、家の鍵、開けたんだっけ。……それで、珠鈴が来てくれたのか。
「り、璃花! だ、大丈夫? こ、これ、水と薬、持ってきたから……」
「……ん、ありがと」
素直にお礼を言うと、何故か珠鈴の表情が暗くなっていった。
……? どうしたんだろ。……まさか私、変な寝言とか言ってた? 変な夢、見てたしな。……ほんとに、意味わかんない夢。私の行動も、意味わかんなかったし。
「珠鈴、どうしたの?」
「り、璃花……さ、さっきは、ごめん、なさい……私の、せいで……」
珠鈴が何故か、泣きそうになりながら、私にそう言ってくる。
「どうしたの? 大丈夫?」
よく分からないけど、そんな顔、しないで欲しい。私はもっと、珠鈴の笑ってる所が見たいから。
「り、っか? お、覚えて、ないの?」
……覚えてない? ……何を?
「ごめん、何を?」
「ぁ、ぇ、ほ、ほんとに、覚えて、ないの?」
「う、うん」
何か、覚えてなきゃ不味い事、だったのかな。……全然、覚えてない。……どうしよう。
「だ、大丈夫、私が、悪い事、だから……」
「そう、なの? 何か、したの?」
「そ、れは……」
私がそう聞くと、珠鈴は言いにくそうに、言葉を詰まらせた。
「珠鈴、言いずらいことなら、言わなくていいよ」
珠鈴が何かしたのかもしれないけど、別に、覚えてないし、どうでもいい。
あ、そういえば、薬……いや、体、楽だな。……それでも一応飲んでおいた方がいいか。
「で、でも、私、最低な、事を――」
「珠鈴、大丈夫だから。取り敢えず、薬、飲むね」
珠鈴の言葉に被せて私はそう言って、珠鈴が持ってきてくれた薬と水を飲んだ。
「言ってもいいって思える時が来たら、言ってね。それまでは、大丈夫だから。それに多分、忘れるくらいのことなんだし、私は全然気にしないことだと思うけど」
と言うか、私も催眠術にかかった振りとかして、必要のない罪悪感を珠鈴に感じさせちゃったりしてる訳だし、お互い様だよ。
「でも――」
「それに、私だって、珠鈴に隠し事してる。これで、お互い様、でしょ?」
さっきから、でもでも、と何かを言おうとする珠鈴の言葉を遮って、私はそう言った。
実際、ほんとにお互い様だと思ってる。だから、そんな顔しないでよ。
「わ、かった。……でも、いつか、ちゃんと話して、謝る、から。……その時は、璃花の隠してることも、教えて」
「ん」
頷きながら、ちょうど手の届く所にあったから、私は珠鈴の頭を撫でた。
すると、さっきまでの様子が嘘みたいに、笑顔になった。……単純だなぁ。でも、私はそんな単純な珠鈴が好きだから、いいけどね。
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