終わった
※珠鈴視点
……鍵、開けてくれてたり、しないかな。
冗談のつもりで、そう思いながら、扉を引っ張ると、普通に、開いた。
えっ?! 開いたんだけど……璃花かが、開けておいてくれたのかな? じ、じゃあ、入っても、いいんだよね。
私は璃花が眠ってた時のために、璃花を起こさないようにと、ゆっくり、家の中に入って、ゆっくり、扉を閉めた。
そして、足音を鳴らさないように、璃花の部屋の扉をまた、ゆっくりと開いた。
「すぅーすぅー」
すると、小さく寝息を立てながら、璃花は眠っていた。
……これ、今がチャンスってこと、だよね。……璃花に変なことをするチャンスなんて意味じゃなくて、カバンの中に入ってる璃花のブラジャーを返すチャンスってことだ。
そう決めて、私は扉を閉める音で璃花が起きたら困るから、扉をそのままにして、洗濯機が置いてある部屋に向かった。
一応、璃花の家には泊まったことだってあるし、洗濯機の場所くらい知ってる。……あの時は、我慢するのが大変だったな。
そんな昔のことを思い出していると、洗濯機が置いてある部屋に着いた。
部屋に着いて直ぐ、私はカバンから璃花のブラジャーを取り出して、洗濯機の中を覗いた。そして、洗濯機の中身が洗ってあるのか、洗ってないのかを確認するために、中に入っていた物を適当に手に取った。
すると、璃花の下着が出てきた。
「ッ」
私はそれを見た瞬間、思わず息を飲んだ。
……た、確かめるため。これは確かめるため、だから。
そうやって自分に言い訳して、私はまた、璃花の下着を顔に近づけて、匂いを嗅いだ。
凄い、匂い……絶対、洗ってない、やつだ……と、取り敢えず、ブラジャーを返そう。
私は自己嫌悪の念に駆られながら、ブラジャーだけを、洗濯機に入れた。
「こ、これは、もうちょっと、だけ……」
そう呟きながら、私は自分の下着に手を伸ばしていた。
だめ、だめ、絶対に、だめっ。昨日とは、状況が違う。ここは、璃花の家、なんだよ? そんなところで、声なんて上げたから、璃花が起きてきちゃう。だから、だめ、なのに……
そう思いながらも、私は下着に伸ばす手を止められなかった。
「んっ、り、璃花っ、璃花っ、璃花っ」
私は自分の顔に匂いを嗅ぎながら、その場に座り込んで、声が少しでも漏れないようにと璃花の下着を自分の顔に押し付けて、小さく喘ぎながら、璃花の名前をいっぱい呼んだ。
「……珠鈴?」
「ッ、あ、り、っか、これ、は、ち、がっ」
突然声をかけられて、私は顔に押付けていた下着を思わず、座っていた私の股の間に落としてしまった。
そして、絶望した。自業自得。それは分かってる。でも……涙目になりながら、私は思った。
終わった、と。
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