自分勝手

 ※珠鈴視点


 お昼休みになった。

 なのに、まだ、璃花へのメッセージには、既読すらついてなかった。

 ……大丈夫、かな。


 璃花の事が更に心配になってきた瞬間、璃花へのメッセージに既読がついた。

 だから、返信が来るのを待った。

 なのに、全然返信が来なくて、なんだか、嫌な予感がしたから、私は璃花に電話を掛けた。

 

【……珠鈴?】


 すると、璃花は電話に出てくれて、そんな、弱々しい声で私のことを呼んできた。

 ……多分、隠してるつもりなんだろうけど、全然隠しきれてないよ、璃花。……ほんとに、璃花は抜けてる所がある。……いや、これは風邪で頭が回ってないからかな。


【璃花! 大丈夫!?】


 私の冷静な思考とは裏腹に、無意識のうちに、そんな大声を出してしまった。

 ……どうしよう、今の璃花にこんな大声出しちゃ、ダメでしょ。頭に響いて、痛くなるかもしれない。


【……ただの急用なんだから、大丈夫だよ】


 私がそんな心配をしていると、璃花は優しく、そう言ってくれた。

 でも、全然、声が大丈夫じゃないんだよ。


【声、おかしいじゃん。なんで、嘘つくの? 私のため?】

【嘘、ついてない】


 ……私の為、そうだとは分かってる。でも、それでも、私は璃花に嘘をつかれたく無かった。

 理不尽なことを思ってるのは分かってる。自分勝手なことを思ってるのは分かってる。私の方が、いっぱい璃花に隠し事してるんだから、こんなこと思う資格はないのは分かってる。でも、止められなかった。


【ついてるじゃん。……家、行くから。何か欲しいもの、ある?】


 だから、そんな拗ねたような声で聞いてしまった。


【…………薬、買ってきてほしい】


 すると、璃花は諦めてくれたのか、正直に、そう言ってくれた。


【分かった。……でも、最初から、そう言ってよ】

【……ごめん、なさい】

【いいよ。もう寝てて】

【ん】


 最初から、頼ってくれたらいいのに。……私みたいなやつでも、それくらいは出来るよ。

 そう思いながら、通話が切れたスマホで、私は時間を確認した。

 ……もう、お昼ご飯食べる時間ないな。……璃花も居ないし、別にいっか。一日くらい。





 放課後になった。

 私は璃花に頼まれた通り、薬屋に向かって、薬を買ってから、璃花の家に向かった。

 そして、璃花の家のインターホンを鳴らそうとしたところで、思った。

 ……寝てたら、どうしよう。起こすのも、悪い、よね。

 ポストに入れておく? いや、それじゃあ璃花がここまで取りに来るの、大変じゃん。

 ……鍵、開けてくれてたり、しないかな。


 冗談のつもりで、そう思いながら、扉を引っ張ると、普通に、開いた。

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