釣り合わない

※珠鈴視点


 璃花がブラジャーを置いて帰ってから、直ぐに次の日になった。

 私は罪悪感に蝕まれながらも、制服に着替えて、学校に向かった。璃花のブラジャーを中が見えない入れ物に入れた状態で。

 返さないと……でも、どうやって? 分からない。分からないけど、返さないと、だめだ。


 そう決心して、教室に入ったんだけど、まだ、璃花は来てなかった。

 それに気がついた瞬間、私は安堵してしまった。いつもだったら、一秒でも早く、璃花に会いたいと思うのに。……そんな卑怯な自分に私はまた、嫌気が差した。

 嫉妬もするし、璃花の体を汚すし、挙句の果てには、盗みまで働いてる。……ほんとに、最低。

 でも、本当に嫌気が差すのは、こんなに自分が最低だって分かってるのに、璃花と付き合いたいって、結婚したいって思ってる事だ。

 私なんかじゃ璃花とは釣り合わない。そう、分かってるのに、私以外が璃花の隣に立ってる想像をしただけで、気が狂いそうだった。


【急用が出来たから、休む】


 私が自己嫌悪に陥っていると、璃花から、そんなメッセージが着た。

 私は疑った。璃花は私と違って優しいから、私の為に、嘘をついてるんじゃないかと。


【ほんとに急用? 私の風邪が移ったとかじゃない?】


 だから、私はそう聞いた。

 私が焦ってるだけかもしれないけど、なかなか返ってこない。


【違うよ】


 私は疑わずにはいられなかった。

 だって、いつもの璃花だったら「違う」って一言だけで「よ」なんてつけないと思ったから。……何となく、私に少しでも優しく言い聞かせるような感じに見えた。

 

【ほんとに? 嘘じゃない?】


 改めて、そう聞いた。

 ……なかなか返信が返ってこない。それどころか、既読すらつかなかった。

 もしかして、寝てる?


【璃花? 寝てるの? やっぱり、風邪、移しちゃってるの?】


 やっぱり返ってこない。

 そして、返信を待っていると、チャイムが鳴った。

 授業が終わって、返信が来てなかったら、家に行くことを伝えよう。もし仮に、ほんとに急用が出来てて、居なかったとしても、それはそれで、璃花が元気なら、別にいいから。




【家、行くよ? お見舞い、行くからね?】


 チャイムが鳴っても、返信が来てなかったから、私は勝手に、もう寝てるんだと思って、そんなメッセージを一方的に送った。

 寝てるんだから、どうせ返信は返ってこないと思って、そのままスマホを仕舞って、次の授業の用意をした。

 

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