なんで気がつくの?

 あ、桜井に頼もうかな。


 そう桜井の存在が頭によぎった瞬間、スマホが震えだし、珠鈴から電話が掛かってきた。


【……珠鈴?】


 少し迷ったけど、私は電話に出て、珠鈴の名前を呼んだ。

 

【璃花! 大丈夫!?】

【……ただの急用なんだから、大丈夫だよ】


 声が、ちょっとおかしいかもしれないけど、電話なんだし、これくらい大丈夫だと思って、私は普通にそう言った。


【声、おかしいじゃん。なんで、嘘つくの? 私のため?】

【嘘、ついてない】


 なんで気がつくの? 声はなるべく普通になるようにしてたつもりだし、そもそも、電話越しなんだよ? ……いや、私のことをそれだけ知ってくれてるって思うと嬉しいけど、今は、気が付かないでよ。

 せっかく、珠鈴が気に病まないように、嘘ついてるのに。


【ついてるじゃん。……家、行くから。何か欲しいもの、ある?】


 すると、私の言葉を聞いた珠鈴は、拗ねたような声で、そう言ってきた。

 

【…………薬、買ってきてほしい】


 私はもう隠すことが出来ないと諦めて、そう言った。


【分かった。……でも、最初から、そう言ってよ】

【……ごめん、なさい】

【いいよ。もう寝てて】

【ん】


 私が素直に謝ると、珠鈴はさっきまでの拗ねたような声と違って、優しく、そう言ってくれた。

 だから、電話越しだけど、頷いて、私はまた、ベッドに入った。学校が終わるくらいの時間帯に目覚ましをセットしながら。

 すると、体がダルかったからか、また、すぐに眠りにつくことが出来た。





 ……うるさい。……体、ダルい。……でも、目覚まし止めて、玄関の扉、開けないと。

 そう思って、目覚ましで起こされた私は、重たい体を起こして、玄関の扉を開けてから、また倒れるように、ベッドに寝転んで、眠った。

 珠鈴が来たら、起こしてくれるでしょ、と思って。仮に、風邪がうつるし、私が気持ちよさそうに寝てるって理由で起こされなかったとしても、薬さえ置いといてくれれば、私は大丈夫だから。……もちろんその場合は、後でお金を返すし、お礼もするし。


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