桜井と食堂

 あっという間……ではない……と言うか、むしろいつもより長く感じたけど、お昼休みになった。

 多分、長く感じたのは休み時間とか、いつも私と話してくれてる珠鈴が居なかったから。……珠鈴が居ないんだったら、違う友達。桜井と話をしに行ったり、普通だったらするんだろうけど、本来なら私も、桜井は多分……いや、ほぼ確信だけど、自分から積極的に話しかけたりするタイプじゃない。そんな私たちだから、休み時間に話したりはせずに、お昼休みまで、二人揃ってぼっちだった。

 ……桜井もぼっちだったのは、チラッと見たから、確認済み。


 そんなことを考えながら、私は席に座っている桜井の元に向かった。

 約束してたし、こういう理由があれば、自分からでも、向かえる。……いや、これが珠鈴とかだったら、珠鈴の方から来てくれるってわかってるから、私だったら行かないけど、桜井の場合、来てくれるか分からないから、私が向かったってのが正しいか。


「学食、行こ? 桜井も学食だったでしょ?」

「あ、は、はい!」


 そして、そう言うと、桜井はびっくりしたようにしていたけど、状況を理解したのか、嬉しそうに、頷いてくれた。

 私は桜井が頷いてくれたのに安心して、一緒に学食に向かった。

 

「桜井は何食べる?」

「え、えっと、く、楠さんは?」


 質問に質問で返された。……いや、私もたまに返しちゃうし、気にしないけど。


「唐揚げとご飯」


 今日はそういうのが食べたい気分だったから、私はそう言った。まぁ、気分もあるけど、一番の理由は一番近かったからかな。さっさと買って、席取っときたいし。


「じ、じゃあ、わ、私も、そ、それに、します」

「じゃあ、一緒に買いに行こっか」

「は、はい」

「いや、やっぱり、私が席取っとくから、桜井が買ってきて。あそこ、ちょうど空いてるし」

「え、あ、わ、分かりました」


 同じの……と言うか、同じところで買うんだったら、どう考えてもどっちかが席取っといた方がいいし、私はそう言った。

 桜井もそれで頷いてくれたから、私は指を指した空いてる席を取りに行った。

 良かった。見えてるところの席が空いてて。これで空いてなかったら、桜井に席を取ってもらってたかな。だって、どこの席を取ってるのか分からない私を探す桜井が凄い挙動不審なところが安易に想像できるし。


 そう思って、席を取った私は、桜井を待ってる間暇だから、適当にスマホを開いた。

 

【璃花、一人で食べてるの?】


 すると、そんなメッセージが珠鈴から着てた。

 まだ食べてないし、一人で食べる予定では無いし、そう言えばいいんだろうけど、その前に、私は聞きたいことがあった。


【体調、大丈夫? 寝てなくていいの?】


 さっきの桜井みたいに、まさに今、質問に質問で答えてる状態だけど、私はそれが気になったから。


【うん。もう大丈夫だよ。心配、ありがとね】

【そっか。良かった。……じゃあ、もうお見舞いも要らないかな?】


 お見舞いに行かないなんて、欠片も思ってないけど、私は少し意地悪がしたくて、そうメッセージを送った。

 

【体調悪い。来て】


 すると、直ぐにそんなメッセージが返ってきて、思わず私は笑みが漏れた。

 ただ、直ぐに口元を隠して、笑みを浮かべるのを辞めた。普通に、恥ずかしいから。


【分かった】

【ありがと。……それと、さっきの質問なんだけど、一人、なんだよね?】

【いや、友達と食べるつもり】


 私がそうメッセージを送ると、何故か、既読は着いてるのに、さっきまでと違って、返信がなかなか返ってこなかった。

 ……寝たのかな? 


「お、お待たせ、しました」

「あ、うん。ありがと」

「い、いえ」

「これ、お金」

「は、はい」


 桜井が来たし、私はスマホをポケットに仕舞った。

 まぁ、珠鈴からの返信もないし、大丈夫かな。多分、寝ちゃったんでしょ。この前の私みたいに。

 

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