珠鈴には悪いけど、もう少しだけ

 漫画を読み終わった私は、最初に置いてあった珠鈴のベッドの上に、返した。


「ど、どう、だった?」


 すると、珠鈴が顔を少し赤らめながら、恐る恐るといった感じで聞いてきた。

 特に嘘をつく理由もないと思って、私は正直に答えることにした。


「面白かったよ」

「……り、璃花は、この漫画に出てくる人、みたいに、女の子が、す、好き、なの?」


 ……女の子、というか、私は珠鈴が好き。……多分、珠鈴以外の女の子は好きにならない。

 ……今、それを言ってもいい気持ちはある。と言うか、珠鈴の気持ちが私から離れる可能性もあるんだから、言っておいた方がいいに決まってる。


「ん」


 そう考えたのに、私は、珠鈴に対して頷くだけで、珠鈴の事が好きとは言わなかった。

 だって、もう少し、こうやって、私の気持ちを知らない珠鈴を見てたかったから。ここで珠鈴に好きって伝えて、付き合ったら、それは凄く幸せな事だと思う。でも、私にとっては、今の珠鈴が頑張ってる姿を見るのも、珠鈴には悪いけど、幸せだから。

 ……珠鈴だって、催眠術で、勝手にキス、とかしてきてるんだから、これくらい、文句ないよね? 


「そ、そうなんだ……も、もう好きな人、とか、いるの?」


 珠鈴は私が女の子が好きという事実を私に隠すように、嬉しそうにしながら、そう聞いてきた。

 全然隠せてないんだよなぁ……こういうところが、好き。

 

「珠鈴…………はどうなの?」

「えっ、あっ、わ、私?」


 わざと、珠鈴の名前を呼んでから、間を開けた。意地悪、かな。でも、こういうことが出来るのって、付き合う前だけだから。


「そうなんだ。誰か、聞いていい?」

「……い、いつか、いい、ます」

「そう」

「そ、それで、璃花は?」


 恥ずかしそうに俯きながら、珠鈴はそう聞いてきた。

 ここで、珠鈴以外の名前を出す……のは流石にないな。私は別に、珠鈴を悲しませたいわけじゃないから。


「最近、できた」

「だ、だれ?」

「……私も、いつか言うよ」


 そう言いながら、私も軽く、珠鈴の方にもたれかかった。


「う、うん……分かった」


 すると、更に顔を赤らめながら、頷いてくれた。

 

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