これで好きじゃないんだとしたら、分からなくなる

 催眠術にかけられたことになってる私は、言われた通り、珠鈴について行くと、人気のないところに案内された。

 そして、珠鈴は私の方を向くと、いきなり、抱きついてきて、そのまま、キスをしてきた。


 え……いくら、人気がないとはいえ、絶対じゃないし、そもそも、ここ、学校なんだけど。……前は、学校ではしてこなかったのに。

 

「ごめん璃花。我慢、出来なかった。……教室、戻ろ、璃花」


 唇を離した珠鈴は、そう言ってきた。

 もう、終わり、なんだ。

 ……あれ、私、今、残念に思った? いや、学校なんだし、そんなわけ、ないか。

 一瞬過った自分の感情を否定しながら、私は珠鈴の後をついて行った。


「璃花、また都合のいいように、辻褄、合わせておいて」





 いつもみたいに、辻褄を合わせて、催眠術が解けた振りをして、授業を受けて、放課後になった。

 

「璃花、今日も遊びに行っていい?」

「いや、私が珠鈴の家に行く」


 昨日から来てもらってばかりだし、なんなら、今日なんて朝も来てもらったんだから、流石に悪いと思って、私はそう言った。


「え、う、うん!」

「じゃあ、帰ろ」


 そう言って、私は荷物を持って、珠鈴と一緒に学校を出た。

 

「珠鈴の家、行くの久しぶりだね」

「そうだね。でも、私が璃花の家に行きたかったから。……あ、家に来てくれるのは、もちろん嬉しいんだよ?」

 

 私が素直に思ったことを言うと、珠鈴は幸せそうな笑顔で、そう言ってきた。

 可愛い。

 そう思った私は、珠鈴の頭を撫でていた。


「り、璃花!? ど、どうしたの?」

 

 珠鈴は私の突然の行動に、びっくりして、そう聞いてきたけど、嫌がる様子は無くて、それどころか、さっきより幸せそうで、私も幸せな気持ちになってくる。

 ……これ、もう私、珠鈴のこと、普通に好きなんじゃないの? 親友としてじゃなくて、そういう意味で。……これで好きじゃないんだとしたら、ほんとに、好きっていうのがわかんなくなるよ。


「ぁ」


 そんなことを考えながら、いつまでも珠鈴のことを撫でてるのもどうかと思って、撫でるのをやめると、顔を赤くしながら、小さく、そんな声が漏れ出ていた。

 ……聞こえなかったことに、しとこうかな。……弄るのもどうかと思うし。

 

「は、早く、行こ」


 珠鈴は今の真っ赤な顔を私に見られるのが恥ずかしいのか、髪で隠そうとしながら、そう言ってきた。

 全然隠せてないけど。

 そんな珠鈴と適当に話していると、すぐに家に着いた。

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