美術室

「璃花、美術室、一緒に行こ」

「ん」


 ホームルームが終わったところで、珠鈴が後ろを向いて、私にそう言ってきた。

 断る理由もないし、いつも一緒に行ってるから、私は直ぐに頷いた。





 そして、美術の教科書を持って、私は珠鈴と一緒に、美術室に着いた。

 そのまま、珠鈴と隣同士に座って、チャイムが鳴るのを待った。……いつもは座る席があるんだけど、人を描く授業の時は、描きたい人と隣同士に座るっていうルールだから。

 ……これ、毎回思うけど、私、珠鈴と同じクラスじゃなかったら、絶対終わってた自信がある。


 ……そういえば、桜井、大丈夫かな

 私はそう思って、適当に周りを見渡した。

 すると、一人でいる桜井を見つけた。

 

「……珠鈴って、私以外と組むことって出来る?」


 その瞬間、私はそう聞いていた。

 だって、珠鈴と同じクラスじゃなかったら、私も桜井みたいになってたと思うし。


「出来ないけど」


 すると、珠鈴は直ぐにそう言ってきた。

 え、珠鈴なら、コミュ力も高いと思うし、大丈夫だと思ったんだけど。

 ……でも、珠鈴が無理って言うなら、仕方ない、か。……桜井には悪いけど、私は珠鈴と組もう。


「なんで、そんなこと聞いてきたの? 私以外に、組みたい人でもいたの?」

 

 私が桜井と組むのを諦めたところで、珠鈴がそう聞いてきた。

 そしてそのまま、私がさっき向いてた方向を何かを探すように、見だした。


「珠鈴、もう、チャイム鳴るから」


 だから、私は珠鈴の目を手で覆いながら、そう言った。

 珠鈴が……と言うか、桜井にとって知らない人から、いきなり桜井が話しかけられたら、絶対嫌だろうから、見つからないようにするために。


「う、うん」


 すると、急に珠鈴は大人しくなって、頷いてくれた。

 良かった。桜井に迷惑かけちゃうことにならなくて。

 そう思っていると、チャイムが鳴って、それを見計らっていたかのように、先生が入ってきた。

 先生が入ってきたのを見て、私は珠鈴の目に当ててる手をどかした。


 そして、美術の先生は、体育の先生みたいに、無慈悲な人じゃなかったみたいで、いつも通り、隣に座っている人の絵を描けと言ってきた。

 

「体育の時みたいにならなくて、良かったね」


 だから、私は珠鈴にそう言った。


「うん!」


 すると、珠鈴は嬉しそうに、頷いてくれた。

 そして、私は珠鈴の絵を描く為に、珠鈴と向き合った。

 

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