寝癖
「もう行く?」
制服に着替え終えた私は、部屋の扉を開けて、荷物を持ちながら、扉の前で待っててくれた珠鈴にそう聞いた。
「う、うん。璃花が行くなら、行くよ」
「じゃあ、行こっか」
そう言って、私は玄関で靴を履いて、外に出た。
珠鈴も外に出たのを確認して、扉の鍵を閉めてから、珠鈴との隣に並んで、一緒に学校に向かった。
「あ、珠鈴、寝癖」
「えっ、あっ」
私はふと、珠鈴の方を見て、不自然にはねている髪の毛があることに気がついたから、そう言いながら、手で寝癖を無くすように、頭を撫でるようにした。
そして、寝癖を直す為に、何度か頭を撫でていると、やっと珠鈴の寝癖が無くなった。
「ん、無くなったよ」
「……う、うん。あ、ありがと」
大人しくしてくれていた珠鈴に、私が寝癖が無くなったことを伝えると、私から顔を逸らしながら、お礼を言ってきた。
……あ、流石に外だったし、傍から見たら頭を撫でられてるみたいに見えちゃうから、恥ずかしかったのかな。……いや、それとも、私のことが好き、だから? ……いや、抱きついたりしてきてるんだから、普通に頭が撫でられてるように見られるのが恥ずかしかっただけか。
「あんまり、人居なかったし、気にしないでいいと思うよ」
そう思ったから、私は安心して欲しくて、そう言った。
だって、ほんとにあんまり人がいなかったから。
「う、うん。……だ、大丈夫、だよ」
それでも恥ずかしかったのか、まだ、珠鈴は顔を合わせてくれなかった。
……まぁ、確かに、触っていいかも聞かずに、勝手に寝癖を直すためとはいえ、頭を撫でるようにしたのは、悪かった……かな。
「ごめん。ちゃんと聞いてから、触るべきだった」
「あっ、ち、違うよ。大丈夫だから。直してくれて、ありがと。嬉しかった、から」
「…………ん」
そうやって、恥ずかしがりながらも、嬉しそうにそう言ってくる珠鈴を見てると、何故か胸がドキドキしてきて、私も顔が赤くなってきた。
「早く、行こ」
「う、うん」
私はそんな顔を見られないために、そう言って、珠鈴の少し前を歩き出した。
珠鈴も恥ずかしがってる顔を見られたくなかったのか、私の後ろに居て、隣に来ることはなかった。
そして、学校に着いた。
その頃には、私のドキドキも無くなってて、珠鈴ももう恥ずかしくは無さそうだった。……嬉しそうではあるけど。
そして、珠鈴と一緒に教室に入った。
珠鈴が私の前の席に座って、私も自分の席に座った。
……うわ、一限目、美術の授業だ。……私、絵とか描くの、下手だから、嫌なんだよね。
確か、今日は誰か人を描く授業、だよね。……いつも通り、珠鈴と組めばいいか。……体育の授業みたいにならなかったら、だけど。……まぁ、大丈夫でしょ。美術の先生は体育の先生と違って、私たちの味方だと信じてるから。
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