更衣室では、見てたのに

 珠鈴と一緒に眠ってて、私は目が覚めたんだけど、珠鈴はまだ眠ってた。私に抱きつきながら。

 

「珠鈴? 寝てるの?」


 そして、一応、私はそう聞いた。

 返事が返ってこないから、寝てるんだと思う。

 ……私に抱きついて眠ってる珠鈴を見てると、何故か、私からも抱きしめたくなってきて、そのまま抱きしめ返した。

 すると、寝てるはずなのに、珠鈴が嬉しそうに、顔を緩ませてくれて、それが可愛くて、私はそのまま頭を撫でた。


 可愛い。……でも、ずっとこうしてる訳にはいかないし、今、何時だろう。

 そう思って、私はスマホを手に取って、時間を確認した。

 あ、もう目覚ましなるじゃん。……ちょっと残念だけど、珠鈴を起こさないと。


「珠鈴、起きて」


 私は抱きしめるのと、頭を撫でるのをやめて、珠鈴を起こした。


「……あ、れ、璃花……夢、だったの?」

「なんの事かは分からないけど、もうそろそろ、起きなきゃ、学校遅れちゃうよ」


 何かいい夢を見てたっぽい珠鈴にそう言って、私はベッドから起きて、朝ごはんを食べに行こうとしたんだけど、珠鈴に抱きしめられてて、起きられなかった。


「珠鈴、離して」

「あ、う、うん。……嫌、だった?」

「いや、温かかったし、別に嫌じゃないけど」

「そ、そうなんだ」


 珠鈴は顔がにやけそうなのを我慢して、私のことを離してくれた。

 ……分かりやすいなぁ。こんなところも、可愛いと思うけど。


「ありがと。……珠鈴も一緒に食べる? ただのパンだけど」

「う、ううん。私は大丈夫だよ」

「ん。分かった」


 珠鈴の返事を聞いた私は、頷いて、部屋を出た。

 そしてそのまま、適当に座って、パンを食べだした。

 珠鈴は来てないけど、まだ私の部屋にいるのかな。……それ自体はいいんだけど、また、寝てるのかな。まぁいいや。後で私が起こせばいいだけだし。





「珠鈴、入るよ?」


 パンを食べ終えた私は、自分の部屋をノックしながら、そう聞いた。

 私の部屋ではあるけど、今は珠鈴がいると思うし、一応。


「ちょ、ちょっとだけ待って!」


 すると、中からそう言ってきた。

 私は普通に入ってもいいと言われると思ってたから、少しびっくりしたけど、特に深く考えることはせずに、言われた通りに、待った。


「も、もう入っていいよ」


 そして、そんな声が聞こえてきて、私は自分の部屋に入った。

 すると、珠鈴は私のベッドを背もたれにするように、座っていた。


「私が着替えたら、学校に行こうと思うんだけど、いい?」

「う、うん。大丈夫!」

「じゃあ、着替えるね」


 ……珠鈴がいるけど、私は別に下着姿くらいなら見られることに抵抗なんてないし、このまま着替えてもいいかな。……でも、珠鈴は私のこと、好き、なんだよね。……だったら、気を使って、外に行ってもらった方がいいのかな。

 ……よくわかんないや。外に行ってもらおうとしたら、なんか私が意識してるみたいで、まだ、自分の気持ちも分かってないのに、変な期待させちゃうかもしれないし、このまま着替えよ。

 それに、どうせ更衣室とかで、一緒に着替えてるんだから、外に追い出す方が不自然だと思うし。


「り、璃花!?」


 そう思って、服を脱ぎ出すと、焦ったような声が、珠鈴から聞こえてきた。


「制服、着替えようと思って」

「わ、私、外、出てるよ!」

「ん」


 すると、珠鈴は顔を真っ赤にしながら、そう言って、私のことをチラチラ見ながらも、慌てて部屋を出ていった。

 ……更衣室とかで、珠鈴も見たことあるでしょ。……そこまで、焦る事かな。

 

 私はそう疑問に思いながらも、制服に着替えた。

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