ちゃんと、誤解が無いように言ったはずなのに

「友達」


 色々と考えながら、何かは言わなきゃと思って、私は珠鈴を安心させるために、ただの友達と言った。


「……そう。……いつ、交換、したの?」

「え、今日、だけど」

「……今日の、いつ?」


 ただ友達と連絡先を交換しただけなのに、珠鈴は根掘り葉掘り、そう色々と聞いてきた。

 ……そういう意味で、好きになると、友好関係とかも気になるもの、なのかな。……だったらやっぱり、私は、珠鈴のこと、そういう目で見れないのかな。少なくとも私は、珠鈴の友好関係とか、気にならないから。

 

「珠鈴がお弁当、取りに行ったときだよ」

「……その友達が、今日言ってた、璃花が一緒にお昼ご飯、食べようとしてた人?」

「うん」


 そう聞かれた私は、素直に頷いた。

 でも、名前は言わない。……あの時も思ったけど、珠鈴、話しかけに行きそうだから。


 私はそう考えて、頷いたんだけど、珠鈴がスマホに手を伸ばそうとしてるのが見えた。

 ……また? ……ちゃんと、誤解がないように言ったはずなのに。……やっぱり、嫉妬とかなんかじゃないのかな。

 私がそう考えて、表情に出さないように、内心で理由を考えていると、珠鈴はスマホをしまった。

 ……あれ、催眠術をかけようとした訳じゃないの? ……いや、確実に、かけようとしてたと思う。……だって、表情が、いつも催眠術をかけてくる時の表情だったから。


「友達では、私が一番、なんだもんね?」

「……ん」


 よく分からなかったけど、そう聞かれたから、私は頷いておいた。

 

「……寒い、から」


 すると、そう言って、珠鈴は更に私にくっついてきた。

 私はそれを特に拒むことをせずに、そのまま、スマホを弄った。……珠鈴にも見えるように。


「り、璃花? スマホ、見えてるよ?」

「見られて困るものもないし、別にいいよ」

「ふ、ふぅん、そうなんだ」


 私がそう言うと、珠鈴は嬉しそうにしていた。……隠してるつもりなんだろうけど、バレバレすぎる。

 可愛い。……うん。可愛いと思う。……でも、友達でも、可愛いとは思うと思うし、やっぱり、まだ分からないや。

 珠鈴には悪いけど、ゆっくり考えていこう。


【楠さん? 私、なにか失礼なことを言いましたか?】


 そんなことを考えていると、私のスマホの上の部分にそんなメッセージが表示された。

 ……確かに、既読だけつけて、何も言ってないもんね。……多分、心配になったか何かで、こんなメッセージを送ってきたんだろうな。

 ……名前、見えない設定にしておいて良かった。珠鈴に見られてるからね。

 あ、そう、珠鈴。変な勘違い、してないよね? ……いや、勘違いのしようがあるメッセージじゃないけどさ。


「苗字呼び、なんだ」

「ん、そうだよ」


 今日友達になったばっかりだし。

 すると、私の返事を聞いた珠鈴は、そうなんだ、と言って、珠鈴もスマホを弄りはじめた。私に見えるように。

 いや、別に私は気にならないし、見ないけどさ。

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