告白をしてくるまでには

「珠鈴、まだ照れてるの?」

「べ、別に照れてなんかないよ! び、びっくりしただけっていうか……た、タイミングが悪いというか……」

「タイミング?」

「な、なんでもないよ」

 

 ちょっと、意地悪だったかな。……いや、私は勝手にキスをされてるんだから、別にいいか。

 ……珠鈴が催眠術無しで告白をしてくるまでには、答え、決めないとね。

 私は珠鈴のことをからかいながら、そう決心した。






「璃花」

「ん、なに?」


 そして、決心したはいいものの、そんな直ぐには分からないから、私はいつも通り、適当にスマホを弄って、珠鈴は私の家にある漫画を適当に読んでいたんだけど、珠鈴は急に何かを決心した様子で漫画を閉じると、私のことを呼んできた。


「もうちょっと、近づいていい? ちょっと、寒くてさ」


 そして、そう言ってきた。

 珠鈴は親友なんだし、それくらい普通でしょ。と言った感じに言ってきてるように見せてるんだろうけど、珠鈴の気持ちを知っちゃった私からしたら、断られるのが怖くて、凄く、勇気を振り絞って言ってきてるのが分かった。


「まぁ、いいよ」


 別に拒む理由もなかったから、私はそう言った。

 珠鈴のことをどういう意味で私が好きなのかは分からないけど、これくらいだったら、親友同士でも普通だと思うし。


「あ、ありがと、璃花!」


 すると、私の言葉を聞いた珠鈴は、さっきまでの不安そうな顔を消して、満面の笑みでそう言ってきた。

 そしてそのまま、私の肩に珠鈴の肩が密着するような形で、ピッタリと私にくっついてきた。


「えへへ、璃花、温かいね」

「珠鈴も十分、温かいよ」


 そう言って、私はスマホに目を落とした。

 だって、私の言葉を聞いた珠鈴が、嬉しそうな顔をしながら、少し露出している肌と一緒に、顔まで赤くしていったから。


 正直、可愛いとは思った。好きかは分からないけど、可愛いとは思った。でも、こんな様子の珠鈴をずっと見てて、察せないのはおかしな話だと思ったから、スマホに目を落としたんだけど、ちょうど私がスマホを見たところで、メッセージアプリの通知が来た。

 今の時間帯に親ってことは無いと思うから、私の連絡先を交換している人数的に、一人しかない。

 そう確信を持って、私はメッセージを見ると、案の定、桜井からだった。


【楠さん。今日からよろしくお願いします】


 すると、そんなメッセージがきていた。

 まぁ、メッセージなんだから、当たり前なんだけど、リアルとは全然違うな。

 ……いや、メッセージ上でも、あんなどもった感じになってたら、流石にちょっと引くけどさ。


 私がそう思って、少し笑いをこらえていると、さっきまで笑顔だったはずなのに、無機質な目をした珠鈴と目が合った。


「それ、誰?」


 すると、そのまま、珠鈴はそう聞いてきた。

 ……もしかして、嫉妬、してる? 私が連絡をとってるのが、恋人とか、そうじゃなくても、それに近い人じゃないかと思って。

 そこで私は気がついた。

 ……あれ、もしかして、学校で催眠術を使ってきてたのも、嫉妬、だったりするのかな。……だって、催眠術を使われる前って、誰かと、距離が近かった気がする。……いや、でも、催眠術がある前から、珠鈴以外とそう言う距離感になったことだってあるし、その時は、何も……あ、よく考えたら、ちょっとだけ、珠鈴の様子がおかしかった気もしなくもないような……

 催眠術っていう力? が手に入ったせいで、我慢が聞かなくなってたり、するのかな。


「友達」


 色々と考えながら、何かは言わなきゃと思って、私は珠鈴を安心させるために、ただの友達と言った。

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