いくら空気が読めない私でも、誤魔化せない

「お邪魔します」


 そう言って、珠鈴が私の家に上がってきた。

 

「璃花、こっち見て」


 そして、私の部屋に来るなり、珠鈴はそう言って、スマホの画面を見せてきた。

 そこには予想通りというか、やっぱり催眠術の画面が映ってた。


「璃花、さっきは許すって言ったけど、やっぱり、だめ。だって、一番って言われて、私、凄く嬉しかったんだよ? 告白だと思った。なのに、璃花は、ただの友達としてって……私、よく我慢したと思うよ?」


 そして、私が催眠術の画面を見た瞬間、珠鈴は我慢ていたものを吐き出すように、そう言ってきた。

 珠鈴、ごめん。……そう言いたいけど、催眠術にかかってることになってる私には、何も言うことが出来なかった。


「催眠術なんて、ずるいことは分かってるよ。でも、ごめんね、璃花。今は、我慢、出来ない。……いつか、ちゃんと話すから、汚させて」


 そう言って、珠鈴は私にキスをしてきた。

 私は二回目だけど、また、びっくりして、体を離しそうになったけど、催眠術にかかってるってことになってるから、我慢した。

 そして、キスをするのをやめて、珠鈴が離れたと思ったら、直ぐに、ほっぺたにも、舐めるように、キスをされた。

 

 しばらく珠鈴は私にキスをすると、今度は私の胸に手を当ててきた。


「ほんとは、このまま、一線も越えて、璃花のこと、もっと汚したい。……でも、そこはまだ我慢できるから、まだ、しないよ。私が我慢出来なくなるまでには、私の事、友達としてじゃなくて、恋人にしたいって意味で、好きになってね」


 そしてそのまま、そう言ってきた。

 最後に「まぁ、催眠術の時にこんなこと言っても、意味無いか」って苦笑いになりながら。


 ……ほんとに、そういう意味で、珠鈴は私の事が好き、なの? ……いくら空気が読めない私でも、こんなこと言われたら、自分を誤魔化せない。

 キスをされて、ドキドキしてる。嫌悪感なんて、一切ない。でも、それは、親友だからなのか、私が、私も知らないうちに珠鈴のこと、そういう意味で好きだからなのか、分からない。

 

「璃花、さっきみたいに、都合のいいように、辻褄を合わせておいて」


「……珠鈴、好きだよ」

「へっ? あ、え? り、璃花?」

「……私の勝ち、ね」

「え?」

「好きって言って、照れた方が負けってゲーム、してたでしょ?」

「あ、う、うん。そう、だね」


 別に、嫌悪感はなかった。でも、何回も、勝手にキスされたわけだし、仕返しとして、私は珠鈴をからかっておいた。

 その時、私は、なんでかは分からなかったけど、私の好きだよって言葉を聞いた時に、恥ずかしそうで、嬉しそうな顔の珠鈴がどうしようもなく愛おしく見えて仕方なかった。

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