そんなに、気にすることかな
「あ、璃花!」
桜井と別れて、空いている席を見つけた私は、適当に座って、スマホを弄っていると、珠鈴が片手にお弁当を持ちながら、手を振って私の方に向かってきた。
「席、ありがとね」
「ん」
そして、珠鈴はお礼を言いながら、私の前に座った。
「璃花、食べる?」
そのまま、いつもみたいに私に食べ物を向けて、あーんをしようとしてくる。
「食べない」
誰も見てないんだったらいいけど、こんな人目のあるところでそれは恥ずかしいと思って、私はいつもみたいにそう答えた。
「えー、美味しくできてると思うのに」
「味の問題じゃない」
そう言って、私は珠鈴があーんってしてくるのを無視して、さっき買った、なんか、ハンバーグがある学食の料理を食べ始めた。
珠鈴もいつも通り、私が食べないと思って、諦めてくれたのか、私に向けていたものを自分の口に運んでいた。
「璃花、今日も家、行っていい?」
そして、半分くらい食べ進めたところで、珠鈴はそう聞いてきた。
……いつもだったら、適当に頷くんだけど、催眠術の事があるから、どうしよう。……理由は分からないけど、また、キスとかされるかも、だし……
「もしかして、だめ、なの?」
私がなんて言おうか迷っていると、珠鈴は悲しそうにしながら、そう聞いてきた。
……一日、遊べないだけで、なんでそんな悲しそうな顔するの。
「……いや、大丈夫、だよ」
「やったぁ! 今日も行くね!」
「ん」
すると、珠鈴はさっきまでの悲しい顔が嘘みたいに、嬉しそうに笑顔になった。
……まぁ、大丈夫でしょ。
私はそう楽観的に考えながら、ご飯を食べ進めた。
「あ、珠鈴、明日か明後日のどっちでもいいんだけど、一緒に食べれないかも」
「は? んっ、な、なんで?」
……? 一瞬、凄い低い声が聞こえた気がするんだけど、気のせいかな。……これだけ周りに人がいるし、気のせいか。
「新しい友達が出来た」
「へ、へぇ……誰?」
桜井……なんだっけ、名前、出てこないんだけど。……あ、連絡先見たら、分かるかも。
そう思って、私はスマホを取り出して、連絡先を確認した。
あ、舞楽だ。
「……秘密」
私としては言っても良かったんだけど、珠鈴は性格的に言ったら、舞楽に喋りにいきそうなんだよね。……舞楽、絶対珠鈴みたいな明るい系の人苦手だと思うし、私はそう言った。
私も、最初は珠鈴のこと苦手だったし。
「……私に、言えないような人、なんだ」
「別にそういう訳じゃないけど」
「じゃあ、言って」
えぇ……そんなに、気にするようなことかな。別に私だったら、珠鈴の友好関係とか、別に気にならないけどな。……私と親友であるっていう事実は変わらないんだから。
「一番大事なのは、珠鈴、だよ」
「えっ、う、うん。えっ、そ、それって――」
「ご馳走様。これ、あっち持って行ってくるね」
そう思って、私はそう言った。
そしてそのまま、続けるようにそう言って、私は椅子から離れた。
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