二人っきりの更衣室で

「璃花、下着姿になって」


 そして、誰もいない更衣室に入るなり、私はそう命令された。

 どうせ着替えるんだし、別にいいけど。

 そう思って、私は言われた通り、下着姿になった。

 すると、珠鈴は、授業前に着替えた時と違って、チラチラじゃなくて、ジロジロと思いっきり見てきた。……まぁ、多分私が催眠術にかかってると思ってるからだよね。……私としては別に同性だし、親友だから別に恥ずかしくないから、いいけどね。


 私がそんなことを考えていると、珠鈴は少しづつ顔を赤らめてきた。

 そして、珠鈴は私の胸を優しく触ってきた。


「んっ」


 私はびっくりして、そんな声が出てしまった。

 やばい。声、出しちゃったら、催眠術にかかってないのがバレるかも。


 私がそう焦っていると、珠鈴も私が急に声を上げたことにびっくりして、胸から手を離してくれた。


「り、璃花?」


 そして、珠鈴は顔を青ざめながら、私の名前を呼んできた。

 私はまだ誤魔化せると思って、何も答えなかった。


「よ、良かった。……性感帯とかだと、声、出ちゃうのかな」


 良かった。

 珠鈴がそう呟いた瞬間、私も心の中でそう思った。


「……璃花、ちゃんと、上書き、しないとね」


 そして、珠鈴はそう言いながら下着姿になって、そのまま抱きついてきた。


「……私だけ……私だけ、だから。それに、私は、服越しじゃないんだから」


 そう言いながら、珠鈴は私の胸を押しつぶすように、力を入れてギュッとしてきた。


「璃花も、抱きしめて」


 そしてそのままそう言ってきたから、私は言う通りにして、珠鈴を抱きしめ返した。

 ……別に抱きしめること自体はいいんだけど、暑い。人肌ってこんなに暑いんだ。

 ……やばい。汗、かいてきたかも。……珠鈴も汗かいてきてるだろうから、お互いでベタついて、やばいんだけど。……珠鈴の汗が私につく分には別に気にしないけど、私の汗が珠鈴につくのは、なんか、汚くて嫌なんだけど……早く、終わってくれないかな。


 私がそう考えてると、珠鈴が抱きつくのをやめていいように私に言ってきて、私から離れていった。

 ……やっぱり、私の汗がつくのが嫌だったのかな。


「……ご飯、食べなきゃだもんね。……あ、でも、どうしよう。流石に、寝てたことには出来ないよ……」


 そして、私から離れた珠鈴は呟くように、そう言ってきた。

 まぁ、確かに。寝てたことには出来ないだろうね。……まぁ、実際は私は催眠術になんかかかってないから、どんな辻褄が合わないことでも大丈夫なんだけどさ。


「え、えっと……り、璃花の都合のように、辻褄を、合わせてくれたり……出来る?」


 すると、珠鈴は焦った様子でそう言ってきた。


「珠鈴、着替えないの?」

「えっ、う、うん。き、着替えるよ」


 だから、私は服を着ながら、自然とそう言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る