あんなことがあった後だと

 二限目の授業が終わって、私はまた、珠鈴に、人気のない場所に連れていかれて、催眠術をかけられるかもしれないと身構えてたんだけど、そんなことは全然なかった。


「璃花? そんなに私の事見て、どうしたの?」

「……なんでもないよ」


 ジロジロ珠鈴のことを見てたからか、珠鈴がそう聞いてきたけど、私は適当に返しておいた。

 

「そう?」

「ん、そうだよ」


 珠鈴に頷くと、納得してくれたのか、そのままいつも通りの他愛もない話をした。

 いつも通りに珠鈴と話しながら休み時間を過ごしていると、チャイムが鳴って、三限目の授業が始まった。





「璃花、一緒に更衣室行こ」

「ん」


 三限目の授業が終わって、私はそう言ってくる珠鈴の言葉に頷いた。

 四限目は体育の授業だから、めんどくさいけど、着替えないといけないから。

 いつも思うけど、正直、珠鈴がいなかったら、絶対サボってたと思う。……喋れないことは無いし、ちょっとだけ喋ったことがある人ならいるんだけど、私、友達って珠鈴しかいないから。


 そんなことを考えながら、珠鈴と喋っていると、直ぐに更衣室に着いた。

 私は更衣室に着くなり、ロッカーの前に立って、直ぐに服を脱ぎ出した。

 すると、いつも通り、珠鈴がチラチラ見てくるのに気がついた。

 ……いつも通りのことなんだけど、あんなことがあった後だと、なんか、そういう意味で珠鈴が見てきてるんじゃないかと疑ってしまう。……まぁ、そんなの、ありえないのは分かってるんだけどさ。

 珠鈴が見てるのは、多分、と言うか確実に、私の胸が羨ましいからだと思う。……別に特別大きいわけじゃないけど、小さいわけでもない私の胸だけど、珠鈴のと比べたら、大きい方だと思うから。

 ……正直、私は胸なんて、別にあってもなくてもどうでもいいと思うタイプだけど、珠鈴は気にしてそうだから、余計なことは言わずに、いつも通り、気がついてないふりをした。

 余計なことを言って、関係が拗れちゃったりしたら最悪だし。……まぁ、今更そんなことで崩れる関係では無いと思うけど、一応ね。


「珠鈴、着替えないの?」


 着替え終わった私は、自然な感じでそう聞いた。

 珠鈴が私の胸を見てて、着替えてないのを気が付かないふりをしながら。


「い、今着替えるよ」

「ん」


 私はそんな珠鈴の言葉に頷いて、珠鈴が着替え終わるのを待った。

 

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